第44話 第三の侵源地への赴任
色々説明されて頭がパンクしたけども。
まぁ、なんだ…… これで心配していたペットたちの大半と出会えたことになる。
「ふぅ。ごちそうさま」
「お粗末様ッス。ひひ。いただきます、ごちそうさまも、こっちだとあんまり浸透してないんすよね」
「確かになぁ。ウチも『
「ご主人様、お飲み物は?」
「いや、大丈夫。俺たちはもてなされる側だから、シーヴァも座って」
「はい…… (さっきまでの話についていけてない)」
「ご主人、お代わりは?」
「ダイジョブ。プチもちゃんと食べておけよ」
「ふうんん…… (ボクもよく分かんない)」
「ほんなら、シラユキはんはまだ薬で眠らされたまんま、っちゅうコトですのん?」
「「っ!?」」
「なんで、コーヒー飲んだらミルクだけだったみたいなビックリ顔をしてるんすか」
「一個も今の要素に被せない例え、いるか……?」
まぁ、ウチの仲間たちの大半が置いてけぼりなのは分かったよ。
後で説明してやらなくちゃな。
【我の身体はもう起きるコトが可能ですが、こうしてまだ『
チアキが、神妙な顔になってきた……。
大変な話か?
【今の、
「ちょちょちょ、待ってまって、パンデミックを、引き起こした!?」
「はぁ、やはり今回
重たい、重いぞその話題は。
そうか、シラユキもチアキも王族だもんな。
そんな理由とか、把握していてもおかしくはない。
でも、俺は戦士でもなく、王家の臣下でもない。
その話題は、重過ぎる。
「それは聞かせるに値するモノにのみ、広めるべきかと……」
「センパイは、値するって思うけどなぁ」
【然り】
イベルタさんが止める通りだ、そこで高評価されても困る。
「いや、そこは聞かないでおくよ。要するに、この状況が収束したならシラユキに会える、ってコトだろ」
【然り】
「その話は、徴兵を受けてる俺が聞くべきじゃなさそうだし。それとも、聞いておく方がいいのか?」
【我の欲目ではありますが、タズマさんなら助けになると思っています】
「ご先祖様が言うなら、教えてもいいんじゃないかなって思う」
ええ…… 信頼が重いぞ。
まぁいいけどさ。
☆
それは確かに、一般人には重すぎる話だった……。
それでもまぁ、もしもの時にその存在を見付けたら、倒したり、企みを阻んだりは出来るかも知れない。
「みんな、今の話は他言無用。いいね?」
「「はいっ」」
「はぁい?」
「まぁユルギはんはよろしおすやろ」
【みんな平和になれば、きっときっと、笑って会える。その時を、楽しみにしています。タズマさん】
遠くへと、つまり俺がいた西の果てへとイメージを繋ぐのは大変だけど、チアキが居てくれたら動き回れる。
……
「何か、またバカにされたよーな気がするッス」
「してないって」
「ホントッスかぁ?」
「ホントホント、鋭いなぁ」
「やっぱバカにしてますねぇ!?」
まぁそれはどーでもいい。
今回はお姫様本人から会いに来たというトンデモだったけど、またどうにか会えるようにと約束をし、俺たちは城を後にした。
☆
「さて、本来なら最初に行くべき港の集合場所へ…… と来たけれど。すげえな」
まず市場でもないのに人が密集していたことに圧倒される。
ざっと千人は居るかな……。
「ご主人様、あちらのようです」
受け付けらしきテントを見付けてくれたシーヴァに引かれて、ナントカ商隊とか書かれている馬車を改造したらしき受け付けに入った。
「小さな貴族様。身代わり料金でしたら、別のテントですよ」
そんな言葉を掛けてきた疲れた顔の係員に、
「私はアレヤ子爵家三男、タズマです。召集に応じ出頭致しました。付随して、ラミアー族から大魔法使いムスフス・トノルーも出頭です。ご確認を」
「や、はいっ、大変失礼を致しました」
「いいえ、召集規定の最年少ですかね。魔法を修めている場合は十才からだというので」
「それでも、大変なご無礼をいたしました……」
そんなに丁寧に頭を下げるより、仕事をしてくれた方がありがたいんだけどなぁ…… にっこり笑いながら、そんなコトを考えていると。
『おう、お前は
めちゃくちゃ違和感のある老人の声が聞こえた。
俺の耳には『日本語』として認識されてるけれど、いかんせんこの世界に来てから、子供の頃からずっと日本語を話したコトがない。
なので、聞こえて理解はできても、返事をするコトが咄嗟にできなかった。
『んん、なんじゃ、外見は子供で中味が違う感じか。百年に一人の魔法の才能持ちとは驚きだ』
俺は何も返事しなかったが、お爺さんは次から次へと話していた。
『ああ、もしかして、日本語が喋れなくなっておるのか? それならそう言えばいいのに』
「あの、お爺さんは何者なんですか?」
まぁ見た目で分かるところを挙げるなら。
職業はたぶん剣士だ。
大剣を腰に
そして服装が『甚兵衛』なのだ。
今まで見たことのない、和装だった。
「お主は王都には初めて来たんじゃなぁ。儂、有名人なんじゃがの」
「申し訳ありません」
実家は西の果てです。
なので、王都は憧れの大都会なんです。
「すまんな、儂はトール・グルムガス。日本語だと
「あっ、これは、恐縮です! はじめまして。私はタズマと申します…… って、鑑定スキルでしょうか、もう知られていますね」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃな」
その称号は、この大陸一番の剣の腕とスキルを持っている証。
昔は兄弟で剣の稽古をして、誰かが剣星様に弟子入り出来るかなんて話もしたよ…… こんなにフランクな日本人だとは思ってもみなかった。
「使っていても堅苦しい反応しかないから、称号なんぞ忘れて話して欲しいんじゃ。えらく殺風景な場所での出会いで悲しいが、もう少しお主の話を聞きたい。そこの受け付けが終わったら、となりのテントにおいで」
俺は姿勢を正し、頭を下げてトール様を見送った。
はあ~、緊張した。
「あの…… 確認出来ました……」
大丈夫、コワクナイヨー、俺も剣星様の登場にドッキドキだから。
☆
『大魔法使いとなると単独で指令があるのですが…… いえ、剣星様のお知り合いとなれば、タズマ様の随行としてそちらもまとめて扱わせていただきます!』
なんか、気を遣わせ手間を増やしてしまったみたいだ…… ありがたいから甘えてしまうけど。
名前も知らない係員さん、ごめんね。
「おお、来たのぅ! まぁ座ってくれ…… と、ずいぶんと賑やかじゃなぁ、しかも女ばかり。やりおる」
「あの、すいません。この度はお招きいただきますて……」
噛んだ。
「いいから、座って話そうじゃないかの」
「あ、はい。お邪魔致します」
仲間を全員連れて入ると流石に大きなテントとは言えいっぱいなので、何人かにしようかと考えていると。
「ああ、美人が近くに居るのは苦しくもない。むしろ健康にいい。そのままで」
「……はい」
亜人種族に対する偏見はなさそう。
でもスケベジジイ認定はしておいた。
すると、剣星様のとなりにいた似た顔立ちの老人が笑って。
「間違ってはいないけれど、セクハラだから」
「なにを言う。美人の近くに居ると、姿勢が矯正されるというのはどこでも正しい話だ」
せっかくの威厳が台無しだった。
スケベジジイ認定、固定で。
そのやり取りは、何だか年季を感じる。
しかし二人は兄弟ではなく、親子だった。
「紹介しよう、儂の子供でカッター侯爵じゃ。日本人のお主には決してフルネームで呼んで欲しくないらしいがの」
「お父様、何でそう要らんことしいなんですか……!」
剣星様は要らんことしいなんですね。
何だか微笑ましかった。
「さて、
「は、はい。まずはカッター侯爵様、はじめまして。アレヤ子爵家三男のタズマと申します……」
そして、俺やシーヴァたちが転生して来たことをフワッと説明し、中級以下の魔法が使えること、スキルで仲間だけ強化出来ることなどを説明した。
当然、これは鑑定スキルで見抜かれる事柄だからこそ。
ところが、剣星様のスキルは鑑定よりも性能が良いらしく。
「それ以外にも頼もしい称号持っとるじゃないか。『
「は…… はあ。どうして……」
「すまんが、儂は少しばかり『眼』が良くてな」
隠し事は、よせってコトか…… まぁ上級爵位の二人に何を隠せるモノでもない。
「転生者であるお主ならば、経験則など使って様々に対応が出来そうだからの。この事態の収拾のために、儂の傘下に入らんかというお誘いのつもりなんじゃが……」
「端から見たら子供を手下に加えようとしてるので、ギャグにしか思えませんよね」
「はっはっは。じゃろうな。本気なのは、分かってもらえると思うておるが」
親子で笑ってくれてますが…… 俺が魔法を行使してここまで来た道程で、図らずも称号を得ることができていた。
称号は、手順を踏んで備えるものだけれど、その恩恵は大きい。
それも、あれば有るだけ加算されていく。
俺が魔法を使えることは知られていて、更に称号が漏れている。
スカウトされるのも当然なのか…… 期待されても困るんだけどな。
でも、もしこの誘いを受けてしまえば、家族から遠ざかる事になるのではと心配していたら、それを見抜かれた。
「言っておくが、徴兵の話とは別だと思って欲しい。お主が新たな家族を守りたいからこそ、こんなに早く参じたのだと感じておる。じゃから、単純にお主の力量を買っていると知って欲しいだけなんじゃ」
そうなのだろうか。
まぁ深読みは考えるだけで嫌になる。
剣星様の知り合いだというのは悪くない。
「分かりました。このお誘い、受けさせていただきます」
「うむうむ。まぁ特に何を強制するでもない。ただの友だちだと思っておればよい」
「いい返事だ。ありがたいですよ。何かあったら、頼みます」
そうして、笑顔で握手なんかしてるけど……
なるべく早く、区切りを付けて休みたかった。
「伝令です! 剣星様、新たな『侵源地』が!」
「おお、儂の普段の行いの賜物かの。仲間を増やせた瞬間にコレか」
「タズマ君、僕たちは、友だちだよね?」
その言葉に頷きつつ、剣星様の眼を見ていた。
こんな事態を分かっていたんじゃなかろうな……?
そんな怨みがましい視線は、何の効果もなさそうだ。
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