第35話 金と銀と
「頭上げて?」
そう言われて頭を上げると、目の前には神々しいキンピカの頭と瞳があった。
ヒェッ! イケメン! 超イケメン!!
カエルムもイケメンだけど、こっちのキンピカの人もカエルムとは別のタイプのイケメンだ。
カエルムがシュッとしたクール系のイケメンなら、目の前のキンピカ様はふわっとした癒し系タイプのイケメンだ。
そしてカエルムと同じ金髪金目という配色のせいで、なんとなくカエルムと見た目の印象が被る。
「君が僕と間違えた人は、僕と似たような金髪なのかい?」
「はい、後姿もあまりにそっくりで、失礼しました」
「ううん、いいよいいよ。こんな派手な金髪珍しいもんね? 似たような色で背格好も似てたら間違えて当然さ」
確かにこんな眩しい金髪なんてカエルム以外いないと思って、つい早とちりをしてしまった。
「ところで、僕に似ている金髪君は、君のお友達かい?」
「お友達……」
友達なのかなぁ……私は友達と思ってるけど、カエルムからは雇い主と助手としか思われてないかもしれない。
「お友達兼助手です」
ちょっと迷ったけど、私は友達だと思ってるから、私にとっては友達だ。
「へぇ。君はそのお友達兼助手を探してたの?」
「ええ、宿から出て行くのが見えたので」
ここまで言って、そういえば気になって後を追っかけて来ただけだった事を思い出した。
「あ、いえ、同じ宿に泊まってるので、宿に戻れば合流できるので」
「そう。ところでアレ、君を追っかけて来たんじゃないの?」
「え?」
キンピカ様が指さした方を見ると、さっき絡んできた男達がこっちに向かって走って来ていた。
二人しかいないところを見ると、眠らせたもう一人はその場に置いて来たのかな。ひどい。
「知り合い?」
「いえ、さっき声を掛けられただけです」
「なるほど。レムちょっと追っ払っといて」
「はい」
レムと呼ばれた男性が、キンピカ様に言われて、私を追って来たと思われる男性二人の方へ向かった。
私の後始末やってもらって、何だか申し訳ないわ……。
「ところで宿に泊まってるって言ってたけど、この町の子じゃないの? それにまだ若そうなのに助手がいるなんて、職人さん?」
「ええ、一応薬師です。ダリにはお仕事で来たんです」
「へー、そうなんだ。あっちは片付いたみたいだね」
キンピカ様が言う方を見ると、私を追って来ていたと思われる男達が、何か言いながら去って行くのが見えた。
その後ろ姿を見届けた、銀髪の男性がこちらを振り返って目が合うと、ニコリと微笑まれた。
こっちもイケメンだわ……この世界の男性の顔面偏差値高すぎない!?
「ところで君はこのまま助手君を探すのかい?」
「えーと……どうしよう」
カエルムがどこに行ったか全く心当たりないしなぁ。
それにカエルムが宿から出てから結構時間経ってるし、そういうお店行ってるならもう……。
よし! 帰ろう! 明日は講習会あるし、帰って寝よう!! べ、別にふて寝じゃないし!
「宿に帰って待つことにします。間違えて声かけてしまって失礼しました」
ペコリともう一度頭を下げておく。
「気にしないでいいよ。宿に戻るなら送って行こうか? さっきみたいな奴にまた絡まれるかもしれないし」
「いえ、そんなお手数かけるわけにはいきません。一人で帰れます」
「こんな時間に女性が一人で歩くのは危険だから、送って行こう」
断ろうとしたが、そう言って割り込んで来たのは、ピンピカ様と一緒にいた銀髪のイケメンだった。
「レムもそう言ってるし、送って行くよ。警戒しないで大丈夫だよ、僕らダリのお城で滞在して、色々と勉強させてもらってる者なんだ」
お城に滞在って、めっちゃお貴族様じゃないですかーーー!!!
「そそそそそそそんな方に送ってもらうなんて、恐れ多いです!!」
「ふふふ、こういう場合は断る方が失礼なんだよ?」
爽やかな笑顔と共に、バチンとウィンクされる。
「で、では、お願いします」
完敗である。
「へー、リアちゃんって言うんだ。明日お城でお仕事の薬師さんって、もしかして、魔の森から来た魔女さん?」
「ご存知でしたか」
キンピカ様と銀髪様に宿まで送って貰いながら、とりとめのない話をしている。
「うん、僕もレムも魔女さんの講習会に参加予定だからね」
「そうでしたか」
キンピカ様はエルさん、銀髪様はレムさんと言うらしい。二人ともセルベッサ王国からの留学生で、今は実習でダリの城に滞在しているそうだ。
「リア殿は噂通り魔の森に住んでいるのか?」
エルさんが砕けた口調でちょっとチャラい感じなのに対し、レムさんは真面目そうな人だ。見た感じエルさんのほうが、レムさんより身分が高そうな感じだ。
主人と従者って感じなのかなぁ。イケメン主従とか眼福だわ。
「ええ、魔の森のサリュー付近に住んでます」
レムさんに聞かれた質問に答える。
「家族と一緒に? 魔の森の中は危険ではないのか?」
「今は一人暮らしです。魔の森と言っても浅い場所なので、そんなに強い魔物は近くにいないから大丈夫です」
「レム、食いつきすぎ。あんまがっついて聞くと、リアちゃんが引いちゃうよ」
「あ、ああ、すまなかった」
申し訳なさそうに謝るレムさんの紫の色の瞳が揺れていた。
「いえ、魔の森で暮らしてるって言ったら、だいたい皆さん同じようなこと聞くので。あ、あそこが泊っている宿です。送っていただいてありがとうございました」
他愛のない話をしているうちに、宿が見えて来た。
「いえいえ。じゃあ、明日会えるの楽しみにしてるよ」
「ええ、こちらこそ。明日はよろしくお願いします」
ペコリとお辞儀をして、金銀イケメンコンビに別れを告げて、宿の自分の部屋へと戻った。
結局、カエルムがどこに行ったのか分からず終いだったわ。
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