第46話 雅の過去 後半

「こんなところで何するんだ?」


俺は遥に連れられ、河川敷まで来た。


「みやび、勝負しようよ」


と言って、遥は立っている俺の横に並んできた。


「勝負?」


「うん!ここからあの橋まで!」


遥は少し先にある橋を指差す。


「ああ、いいけど」


「じゃあいくよ!よーいドン!」


遥はそう言って、思い切り走り出す。

俺もそれに続き、全力で走る。

遥の足はかなり速くなっており、俺と速さはほとんど差が無かった、いや遥は俺以上に速くなっていた。


「どう?」


そのまま、遥は俺より速くゴールした。


「速いな」


「でしょ?ずっとみやびの練習に付き合ってたからね!」


この時に俺は悟った。俺は特別でもなんでも無いと。


「私!中学にあがったら陸上部に入るよ!」


遥は少し声を大きくして、そう言う。


「そうか、頑張れよ」


「うん!だから次はみやびが練習に付き合ってよ!」


「おれが?」


「うん!だめ?」


遥は少し心配した顔で聞いてくる。


「...わかった、手伝うよ」


俺は陸上を辞めたが、遥との練習はまたしたい、と思ってしまっていた。

練習に付き合うことで遥との時間が増えるのなら...

そんなこんなで、俺は走る練習はしたが、陸上の大会などには出ることは無かった。

遥は大会でもいくつか結果を残していった。

今は遥も俺と付き合って、2人の時間を増やしたいとのことで、陸上は辞めたようだが、おそらく今おれが遥と付き合っているのは、陸上があったからなのだろうと、今は思った。




「お疲れ、みやび」


席に戻ると、遥が笑顔で迎えてくれる。


「ああ」


「咲先輩には負けちゃったね」


「ああ..」


「悔しい?」


「ちょっとな..」


「そっか..」


その後、運動会は無事閉会した。

(それにしても、咲先輩と昔戦ったことがあったなんてな)

俺は少し、咲先輩への見方が変わったかもしれない。

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