海の家は、罪な家

海の家で、撮影会

 どうも、シスタークリスです。また、水着姿ですよ。


 いつものワンピースとは違い、今日はセパレートです。でもわたしが着ると、子供服みたいなんですよね……。


 わたしは今、海の家にいます。


 なんでもオタカフェが海の家を開くということで、わたしも試食に招かれちゃいました。


「撮影会があるなら、欠席すればよかったわ」


 魔術師のヘルトさんが、パレオ付きの花がらビキニでお出迎えです。


「でもいいわよぉ。ヘルトって露出の高い服を着ているくせに、水着なんてめったに着ないから」


「灼けるのがイヤなのよ、あたしは」


 ええ。カレーラス子爵の撮影会もあったのでした。おそらく、それが本命でしょう。撮影会とだけ話せば、我々は絶対に来ませんから。


 その割にヘルトさん、紐ビキニと大胆でアグレッシブですが。


 しかも、水着撮影会のモデルはもう一人います。


「あのー。私は調理師なんですけど?」


 ステフさんでした。家出してラーメン屋さんを開いた、元貴族の少女です。


 意外と、ステフさんってスタイルがいいのですよねえ。嫉妬してしまいます。いけません。シスターたるもの、他人に嫉妬しては。


 ステフさんは、いつもの凛々しいシャツスタイルではありません。キュートなピンク色の水着を着ています。


「コラボカフェですもの。作った人もアピールしないと」


 海の家で出すセレブ向けラーメンを出してくれないか、と頼まれたのでした。


「といいましても、海の家でしょう? クオリティは求められていないと思うのです」


 わたしも、同意見です。


 むしろ、チープさのある味が好まれるかとも。海の家のラーメンは、雑なのがいいとさえ。


「その庶民的な味を浸透させるためにも、ステフさんのラーメンを参考にしようと」


 オーナーのオカシオ伯爵が、弁解しました。


「ですが、撮影に参加するとは聞いていません」


 水着を引っ張りながら、ステフさんが不満を漏らします。


「それは、アタシの意見なの」


「カレーラス子爵の?」


 なんでも、ステフさんのスタイルを見た途端、ビビッときたのだとか。


「厨房で汗だくになりながら働くステフちゃんの背中に、グッときたの! 汗にへばりつくシャツを見て、これよ! と思ったのよね。アタシの目に、狂いはなかったわ!」


 身体を震わせながら、カレーラス子爵は興奮気味にシャッターを下ろし続けました。


「視線がヘンタイね」


 呆れながら、ヘルトさんはポーズを取ります。


「まあ、いいですよ。店に出す新メニューも思いついたので」


 そうなんですね。

 熱心です。


 ラーメンと餃子のセットに焼きそばと、ラインナップは十分なはずなのに。


「おまたせしました。冷麺です」


 冷、麺? はて……。

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