【悲報】そうめんが流れない

 竹を組み立て終えて、お水を流す手順になりました。これで水と一緒に、そうめんも一緒に流すそうですね。


 まずは。井戸から汲み上げた水だけを流しました。


 水が、竹の筒を伝っていきます。


「ふわああ」

 サジーナさんが、拍手しました。


「うん。順調だな」

「ですね」


 ひと仕事終えて、わたしも水着になります。冷たい井戸水もかぶらせてもらいましょうかね。


「ホワ!」


 桶で汲んだ水を、頭から被ります。ああ、気持ちいいですね。


 ソナエさんも、ビキニになっています。白地に赤いラインという、大胆なヒモビキニですよ。バツグンのプロポーションも相まって、刺激的ですね。


「ほんじゃ、そうめん流すぞ」


 そうめんの入ったザルを抱えて、ソナエさんが合図をしました。


 サジーナさんを先頭に、ハシオさん、わたしの順で待機します。


「お願いします」

「それー」


 竹の水に合わせて、そうめんが流れました。


「ホワチャ!?」


 しかし、勢いが出ません。


 そうめんが、途中で止まってしまいました。


「アチャー。角度が悪かったか」


 一旦そうめんを回収し、ソナエさんが竹筒の角度を調節します。


「おそうめん、流れない」


 サジーナさんが、足踏みしながらそうめんを待っていました。


「まあまあ、じっとするっス」


 じれているサジーナさんを、ハシオさんがなだめます。


「よし、今度こそ」


 再度、ソナエさんはそうめんを流しました。


「ホワチャ!?」


 ですが、今度はわたしだけがそうめんを回収してしまいます。サジーナさんの分まで行き渡りません。哀れ、サジーナさんはお箸を空振りしてしまったのでした。



 恐ろしく早いそうめんです。

 わたしでなければ見逃してしまいますね。



「すまん。今度は早すぎたみたいだ。もうちょっと調節が必要だな」

「手伝うっス」


 二人は再度、竹を組み直しに行きました。


「いりますか?」


 箸ですくったそうめんを、わたしはサジーナさんにゆずります。


「いいよ、シスターが食べて」


 サジーナさんは、流しそうめんを楽しみにしているようでした。


 そう、今日のおそうめんは、流して食べるのです。


 流さないでたべるそうめんも、たしかに同じものでしょう。ですが、流すことによって涼しさと風流を味わえます。


 サジーナさんは、その風流を食べに来ていたのでした。


 ならば、わたしもサジーナさんにお付き合いするのが道理。


 すくいとったそうめんを、わたしはソナエさんに返します。


「いいのか?」

「風流ですから」


 これで、罪が洗い流されるなんて思ってはいません。


 とはいえ、罪を風流とともに味わう。


 これもまた、オツなものです。

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