食後の決闘?

 しばらく歩いて、我々は河川敷に到着します。


「服あんがと」と、ソナエさんが服を脱ぎ始めました。下着姿になり、ジャージに着替えます。誰も見ていないとはいえ、大胆すぎますね。


 キサラさんも、上等なお着物を脱ぎ捨てました。東洋の文字がびっしりと描かれた、着物へと着替えます。ミニ浴衣というのでしょうか。下の方が、ミニスカートっぽいですね。お姫様なのに人前で平然と着替えるとは、豪快です。


「よくわかりましたね。会話の端々には、ソナエさんとアカツキさんを結びつけるワードなんて」

「話を聞いた感じで、なんとなく。それに、そんな見事な爆乳ぶら下げている東洋人って、この子くらいですもの」


 これ以上、わかりやすい理由はありませんでした。


「ただ、なんだ。あたしは勝ってもメリットがないんだよな。アカツキ氏には興味ないし」

「まあ。食後の運動ってことで」


 キサラさんが、手を叩きます。


「あたしに勝ったら、我が家で扱っている美味しいお酒を送るわ」


「それは、厄払ヤバいな」


 ソナエさんの目の色が変わりました。


「けど、それだけのモノをいただけるんだ。腕は立つのだろうな」


 さすがソナエさんです。油断をしません。


 わたしも、彼女の雰囲気のヤバさは感じていました。


「いつからやる?」

「もう始まっているわ」


 キサラさんが、紙片を胸から出します。ソナエさんに向けてなげました。


 紙片はソナエさんの前でボンと煙を上げて、オオカミ耳の姫様に姿を変えます。いや、コボルドですかね? とにかく、姫に似た黄金色の獣人が現れました。衣装がフンドシとサラシというのが、また豪傑ですね。


「式のキツネ……あんた、召喚師か?」

「あちきは姫だから、自分で戦うわけにはいかないのよ。でも、その式はあちきの戦闘データを全部盛り込んであるわ。存分にぶつかってちょうだい」


 ダメージを受けすぎると、式が消滅するそうです。そうなったら、ソナエさんの勝ちになるとか。


「では遠慮なく」


 ソナエさんは、いきなりハイキックをかまします。


 前蹴りは、かわされました。


 しかし、ソナエさんはそのまま反転します。後方へ回し蹴りを浴びせに来ました。


 さすがによけきれず、式はガードします。ですが、ふっ飛ばされても目は死んでいません。反撃に、足から三発の火炎弾を放射しました。


「鬼火! 術師タイプか!」


 すぐさま、ソナエさんは式から距離を取ります。


「食後の運動にしては、ど派手じゃないか!」


 ソナエさんは「喝っ!」と、両手に力をためました。

 手のひらが、ぼんやりと光り出します。

 ソナエさんは、光る拳で鬼火を蹴散らしました。こんなこともできるんですね。


「ジャージとフンドシのオバケが戦ってる!」


 野次馬が、ワラワラと集まってきました。


「見世物ではありません。どうぞお帰りください」


 わたしは人払いをします。


「お戯れにしては、やけに殺意高めじゃないか?」

「アンタが巨乳ってだけで、あちきには戦う意味があるわ!」


 それは、少し同情しますね。


「姫様ぁ!」


 やけに立派な服を着たご老人が、河原にやってきました。キサラさんの関係者でしょう。まあ、野次馬が来るほどの暴れ方をしていたら目立ちますよね。


「なにをなさっておいでで!? 帰りますぞ!」

「今いいところなのよ! ほっといて!」


 ご老人が止めに入っても、キサラさんは戦闘をやめる気配はありません。


「いいところ? 冗談だろ?」


 急に、ソナエさんの動きがよくなりました。キサラさんの式に、連続攻撃を叩き込みます。さきほどまでのためらいは、一切ありません。


 やはり手を抜いていましたか。


「こちとら、普段から魔物相手に正面切って戦っているんだ。場数が違うんだよ!」


 ポテンシャルが高かろうと、経験がモノを言います。


「とどめだ!」


 ソナエさんのパンチが、式に迫りました。


「待ってくだされごふうう!?」


 キサラさんの式……ではなくアカツキさんに拳がめり込みます。

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