ワタアメは、罪の味

 さて、わたしの前に泣いているお子さんが来ましたね。これで三人目です。


 一緒に型抜きをして時間を潰しながら、親御さんを待っています。


 子どもさんは、一人は親と合流できたのですが、わたしと遊ぶほうが楽しいとせがまれてしまいました。あまり構いすぎるのも、困りものなのですね。


「おまたせ、クリス。依頼がちょっと手間取っちゃって」


 ヘルトルディス・コットさんが、紫の落ち着いた浴衣で颯爽登場です。早速、から揚げを買い食いしていました。


「ヘルトさん、すごい衣装ですね」

「オシャレだけれど、胸が窮屈でたまらないわ」


 大人の女性です。胸を大胆にはだけさせても、だらしなく見えないなんて。


 東洋でいう「オイラン」って、こんな感じなのでしょう。それとも「クノイチ」? どれも、見たことはありませんが。


「素敵ですね。似合っています」

「ありがと。あんたは、まだ回れないのよね」

「はい。二時間後に、シスター・エマが来てくれます」


 その後は子どもたちを返して、自由行動です。心置きなく、屋台を回ろうかと。


 でも、いけません。止める人がいないと、罪が加速しそうです。


「そう。でも三人もいたんじゃ大変ね」

「困りました。呼び出してもらっているのですが、子どもたちが退屈しそうで」


 ヘルトさんは周りを見渡すと、「わかったわ。ちょっと待ってて」と、どこかのお店に入って行きました。


「こっちにいらっしゃい」


 迷子センターの近くに、ヘルトさんは子どもを連れてくるように言います。何をさせる気でしょうか?


 そこは、ワタアメの屋台でした。割り箸の先端で、お砂糖が綿状になっていきます。


「使い方を見せてもらっても、いいわね?」

「ええ、見ててください」


 丸い機械の中心にある穴に、大将がザラメを入れます。


「こうすると、機械の下にある穴から溶けたザラメが糸状に出てくるんですよ」


 ホントです。糸状のお砂糖が、蜘蛛の糸みたいにビューっと出てきましたね。


「これを、割り箸ですくっていくんです」


 子どもたちは、ワタアメができるのをじーっと眺めています。


 気がつけば、三人分の大きなワタアメが完成します。


「はい、めしあがれ」


 屋台の大将が、ちびっこたちにワタアメを渡します。


 大きい、ワタアメですね。これなら、三人で分けてもおつりがきます。


「いただきましょう」


 子どもたち三人が、ワタアメをちぎって口へ。おいしそうです。

 けれど、どれだけ食べてもなくなりません。

 幸せな大きさですね。


「おねえさんたちも、どうぞ」

「ありがとうございます」


 わたしとへルトさんも、子どもたちからワタアメを分けてもらいました。


 うーん、罪深い! 甘くて、すぐ口の中で溶けていきます。


「ほんとうにおいしいわ。ありがとうみんな」


 わたしたちは、大きなワタアメを楽しみました。


「よかったら、やってみますか?」


 ちょっとくらいなら、自分たちで作っていいそうです。


「わーい」と、子どもたちは迷子であることも忘れて、綿菓子作りに夢中になりました。


 ザラメの量も少なめにしてもらって、一口大のワタアメを作っていきましょう。


「あんまり下の方に割り箸を寄せすぎると、細長くなってしまいます。もっと上下に動かすように。そうそう上手です」


 色々とレクチャーを受けながら、ワタアメを作ります。


 レクチャー料も含め、お金はすべてヘルトさんが出してくれました。


 自分で作ってみると、やや堅さはあります。ですが、これはこれでおいしいですね。


 綿菓子がなくなったあたりで、子どもの親たちがようやく見つかりました。よかったです。


「クリス、おまたせ」


 赤い浴衣を来たシスター・エマが、交代で迷子センターテントに来てくれました。


「ああ、シスターエ、マ……」


 爆乳エルフと巨乳シスター、出会ってはいけない二人が出会ってしまいましたね。

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