第1295話 湯治

「いい湯だなぁ〜」

俺は今道後温泉に来ている。

ことの発端は大国主大神が訪ねて来たことだった。


「ヨシノブ殿、腰の具合はどうだ?」

「これはオオクニヌシさん、おかげさまで充分に良くなってますよ。」

「どれ診てみましょう。」

俺はオオクニヌシから診察を受ける。


「まだまだ、芯に疲労が残っていますね。」

「そうかな〜」

「道後温泉で湯治をおすすめします。」

「道後温泉ですか?」

「ええ、道後温泉はスクナビコナの病気を治した名湯、きっとヨシノブ殿の腰痛も治ることでしょう。」

「ありがとうございます、時間を作って行ってみたいと思います」

俺は社交辞令的な返答をしたつもりだったのだが・・・



後日・・・

「おとうさん、ホテルの準備ができました。」

「えっ?ホテル?」

「はい、おとうさんの療養の為に準備しました。」

「あーあれね、オオクニヌシさんの社交辞令じゃないのかな?」

「おとうさんの療養は何より最優先すべきです。」

ヘルマンの意思は堅く俺は言葉に甘えて道後温泉に来ていた。


「しかし、まあ、観光地は外国人が多いなぁ。」

湯上がりに本館二階で涼んでいるのだが聞こえてくるのは英語や中国語など様々な国の言語であった。


「おとうさん、お待たせしました。」

今日の俺の世話係としてカルラが来ており、俺が湯治をサボらないように監視役も兼ねていた。


「待ってないよ、それより湯上がりに商店街を巡ろうか。」

「はい、ご一緒します。」

カルラは楽しそうに俺の手を引き、商店街を散策するのであった・・・


「今日はカルラさんは不在なのか・・・」

マックスは屋敷の入口で青鬼からカルラの不在を告げられしょんぼりしていた。

「マックスどん、今御父君様の体調が優れない時だぁ、訪問は控えた方が、いいど思うべ。」

「ヨシノブは腰痛なのだろ?知ってはいるが大した事はないのではないか?」

「ただの腰痛でも大変だと思うべが、神威を使用し過ぎた事から来る腰痛だべ、大事を取って安静にしてもらう必要があるべ。」

「ふむ、青鬼殿がおっしゃるのだ、聞く必要があるとは思うが・・・」

マックスはカルラに会いたい気持ちが強かった。


「まあ、どちらにしても今はカルラちゃんは留守だぁ。」

「致し方無いな・・・」

マックスが引き上げようとした時にふと子供達の言葉が耳に入る。、


「おかあさんのアイドルグッズが完成したんだって?」

「しっ、声が大きい、これはまだ子供会の上層部しか知らないんだ。

これは僕達が買う物じゃなくて、神様に売り込む為に必要なんだ。」

「わかってるけど、欲しくなるのは仕方無いだろ?」

「オットーくん、サリナさんのアイドルグッズとはなんの話だ?」

「マックスいたの?」

「訪問して青鬼殿と話していたのだ、サリナさんのグッズがあると言うことはカルラさんのグッズはどうなんだ!」

「・・・あるよ。」

「詳しく教えてもらおうか・・・」

マックスはオットーの肩をガッチリ掴み逃さないようにする。

「マックス落ち着いて・・・ここじゃ人目につくから!」

「ならば場所を変えて話をするとしようか。」

マックスはオットーを連れて別室に行くのであった・・・



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