第1292話 神々の混乱

「ヨシノブも強くなりましたね。」

ルシィラのオルデン撃破は神界でも噂になっていた。

「アマテラス、何を呑気な事を言っている、これは明らかに侵略戦争になるぞ。」

ゼウスは不機嫌そうに話す、仮にオルデンが生きていたら今回の一件を地球からの侵略戦争だと騒ぎ立てる事は明白、これを機に地球の利権を求めて連合軍が出来かねない事態であった。


「あら?オルデンがヨシノブの妻、サリナを誘拐した事が発端です。

ゼウスは愛する妻を拐われても、なにもしないと言いたいのですか?」

「誰もそんな事は言ってない、何をサラリと恐ろしい事を言うのだ。」

「そうですか?それならヘラさんへの相談は止めておきましょうか?」

「勘弁してくれ・・・」

アマテラスに文句を言うつもりが妻の怒りを買う羽目になりそうな事にゼウスはげっそりする。


「しかし、どうする?

全面戦争はあり得る話だぞ。」

「やるなら受けて立ちます、ですがどれだけの世界が誘拐犯の味方になるか楽しみですね。」

「誘拐犯って、真実をどう広めるつもりだ?」

「あら既に始まってますよ。

ヨシノブの子供達がアリアで発信してますから、訪れた者達は今回の一件どちらが悪いか一目瞭然でしょう。」


現在アリアには娯楽を求めて多数の世界から神々が来訪している、そしてサリナの歌声を応援する神もまた多くいたのだ、そのサリナを誘拐した事実を知った者はオルデンに対して怒りを持つ。


「オルデンの奴!誘拐するなど見下げ果てた奴だな。」

「これだから万年こじらせた童貞は駄目だというんだ。」

「まったく自分の世界ならいざ知らず、他所の神に手を出すとは分別もついていないのか。」

経緯を知れば知るほどオルデンに味方しようという者はいなくなる、その為、一部から連合軍という話は出たものの見苦しい軍に加担しようとする神は少なく、地球の神々と争う程の戦力は集まらない、そしてアリアから宣言が出る。


「私達と敵対する地域からの入国は許可されません。」

当然といえば当然なのだが神々にも適応される事になる宣言に敵対しようとしていた世界は震える事になる。


そもそも敵対を言い出しているのは上層部の一部であり、地球の利権を狙ったものだ。


アリアは現在神々の間でもトレンドになるほど人気の観光地である、敵対している世界にも多くの神々がアリアで休暇を楽しもうと考えているものがいるのだ、入国出来ないかも知れないと聞きつけ敵対する世界では混乱が起きる。


「これは主神の判断か?」

「そ、それは・・・」

「小童では話にならん!敵対を決めた者が誰かはけ!」

重鎮たる神の詰問に判断を降した上層部も口を淀む、主神の判断とすれば反乱が起きそうなほど反対派の目が血走っているのだ。


「ご、ごかいです、ルシィラが滅ぼされたと聞き、有事に備えようとしただけでアリアと敵対するつもりは無い。」

「まことか?」

「も、もちろん、主神が皆さんの休暇の邪魔を許す訳がないでしょう。

情報が錯綜した為に混乱を招いてしまい申し訳ない。」

混乱を鎮める為にはルシィラをオルデンを切り捨てる、そもそも誘拐した者の為に動くと外聞も悪い、先走って動いた世界も大人しく引くことになるのであった・・・

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