第1290話 生存

「パ、パス生きているか・・・」

消失した城の地下でオルデンがなんとか意識を取り戻し近くにいたはずのパスに声をかける。

「オルデン様、な、なんとか生きておりますが、右腕と右足を失いました・・・」

「少し待て・・・ふん!」

オルデンは神威を振り絞り瓦礫を除け、自分とパスの周囲に空間を確保する。


「はぁはぁ、くそっ、この程度しか神威が残らなかったか・・・」

オルデンはルーデルの爆弾及びヨシノブの砲撃を神威を全開にして耐え忍んだのだが、その結果神威の多くを消耗していた。


「オルデン様・・・

そ、そのお姿は・・・」

パスは絶句しているようだがオルデン自身は大きな怪我は無い、ただ頭頂部にあった物が無くなり輝きを持っていた。

「パス、それよりお主の止血を早くせねばならぬ、くそっ!誰もおらぬのか!」

オルデンが周囲を見回すも城の周りは更地になっており自分の手の者は存在しない。


「致し方無い、格下に救援を求めるのは本望ではないが、贅沢は言っておられん、パスよ、暫し待て。」

オルデンは近くの世界を治めるアーアに連絡をいれる。


「アーア聞こえるか。」

『オルデン先輩!ご無沙汰しております!』

「挨拶は良い、我が城が襲撃に合った、至急救援隊を送ってくれ、特に医療団を最優先だ、今パスが重傷なんだ。」

『パス先輩が重傷!!いったい何処の奴が襲撃を!』

「詮索は後にしろ、私は至急送れと言ったはずだ。」

『失礼しました、すぐに手配致します!』

アーアにとってオルデンとパスは学生時代の先輩であり、アーアを継ぐ際に後ろ盾になってもらった事も有り、今だに頭の上がらない存在である、これまでにも自分の手に余る問題にも手を貸してもらっており、近々信仰心の減少について相談しようとしていた矢先の連絡であった。


「これは酷い・・・」

派遣された治療を司るチーチは傷ついたパスを見て思わず言葉が出てしまった。

「チーチとか言ったな、パスを早く治せ。」

「申し訳ありません、すでに治療は済ませております。」

「済ませた?まだ手足が無いではないか。」

「何があったかは存じませんが身体を構築する神威が焼き切れております、此処から回復させるのは一級神でも不可能な事にございます。」

「なんだと、ならばパスは右腕右足を失ったままだと言うのか!」

「残念ながら・・・

何処かに治癒に格別特化した神がいればまた違うのかも知れませぬが、私は存じ上げておりません。」

「くそっ!」

オルデンは悔しさに壁を殴る、それと同時に怒りが込み上げてくる。


「おのれ、このオルデンをコケにしてくれた酬いは必ずや受けてもらうぞ!!」

オルデンの激しい怒りにチーチは震えるのであった。

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