第701話 作業中
子供達は我先にと一日の終わりに魔力を使い切り眠る事が習慣となっていく、その為、魔力を使う全員の魔力量が異常なまで底上げされていく。
「はあ、なんでここの子供達はこんなに勤勉なんでしょうか?」
無理をしすぎてないか監視しているファイは驚きをもって見ていた。
魔力を使い切った時の脱力感は大人の魔族でも耐え難いほど辛いものなのだ、それなのに我先にと魔力を使い切る姿は驚くどころか信じられないものだった。
ただ一人、魔力が底をつかないものもいる。
「うにゅ、魔力が無くならないのに増え続けるのよ、ケンちゃんどうしたらいいのよ?」
シモは首を傾げながら刀に話しかける、刀としても問いかけられても困るのだろう、ゆらゆら刀身を揺らしたかと思うと知らんぷりを決めたようで真っ直ぐになる。
「うにゅ、困ったのよ。
おかあさんにダッコされるには魔力をなくさないといけないのよ。」
子供達は魔力を無くして眠りにつくときにサリナにダッコされて寝台に寝かされ部屋に連れて行く事になっていた。
シモはそれをしたいのだが魔力が無くならないのでダッコしてもらえていないのだ。
「シモ、材料使い過ぎ、今日の分はもうないよ。」
材料管理をしているローラがシモに終わりを告げる。
「にゅ!すくないのよ!まだシモの魔力はたくさんあるのよ!」
「もう、シモ一人で20トンもやってるんだからいいでしょ。」
「足りないのよ、ご褒美のダッコは魔力が無くならないとだめなのよ。」
「ダッコなら、おかあさんに言ったらしてくれるじゃない。」
「ちがうのよ!ご褒美のダッコは別物なのよ。」
シモの中では譲らぬ何かがあるようだったが、そもそもご褒美というわけではない、魔力切れまで頑張った結果なだけだった。
「と言ってももう材料も無いし、あまり大量に送ってもね。」
「あぅ・・・」
シモは肩を落とす。
「シモ凄く頑張ってるって聞いたけど大丈夫?」
俺はシモをヒョイと持ち上げダッコする。
「おとうさんなのよ、シモたくさん作ったのよ。」
「ありがとう、俺が引き受けた仕事なのにみんなに頑張って貰って申し訳ないな。」
「うにゅ、おとうさんの為ならみんな頑張るのよ。ほらシモもたくさん作ったのよ、」
シモは自分が作った素材を嬉しそうに指差す。
「凄いじゃないか、さすがシモだね。」
俺はダッコしたままシモの頭を撫でる。
「うにゅ、撫でてなのよ〜」
シモは気持ちよさそうに目を細め、撫でられる喜びを感じていた。
「良かったね、シモ、ご褒美もらえたじゃない。」
ローラはさっきまでちょっと拗ねてたシモを少しからかうように言う。
「頑張ったらご褒美なのよ、これはシモの権利なのよ、ローラに渡さないのよ。」
シモは俺にギュッと抱きつく。
「取らないわよ、おとうさんシモを部屋までお願いしますね、工場はもう締めますから。」
「ローラありがとう、戸締まりよろしく頼むよ。」
俺はローラの頭を優しく撫でる。
ローラは恥ずかしそうにしながらも嬉しい表情を浮かべる。
「ま、任してください、私はシモと違ってご褒美目当てじゃないですけど、頑張ります。」
ローラは俺が撫で終わるまで嬉しそうジッとしていた。
「結局、ローラもご褒美目当てなのよ。」
「違うからね、ご褒美がなくてもちゃんとするし・・・
でも、ご褒美があったらもっと頑張れるかも・・・」
さっきのお返しにシモにからかわれるローラであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます