第670話 宴が・・・

「あのヨシノブ様、この王都に支店を出されるということですけど、どのような、商品を置いていただけるのでしょうか?」

宴が始まるといろいろな人が挨拶を含めて話しかけてくる、今話しているのはルエナという伯爵令嬢だった。


「うーん、急に決まった話ですので何とも言えないですが、逆にどのような物が欲しいのでしょう?」

これの言葉に周囲の視線が集まる。


「わ、私は化粧品の商品を販売してほしいのです。

ルーカス商会の方から聞きましたが、ヨシノブ様のお手製の化粧品は格段に違うとお聞きしたのですが、それを販売してもらうことは・・・」

「お手製の商品ですか・・・

うーん、あれは少し面倒くさい、もとい作るのが大変ですので、現状でもお世話になった人に配るので手一杯ですから、もし置いたとしてもかなり少量になりますよ。」

「・・・そうですか。」

ルエナは明らかに肩を落してガッカリしているようだった。

明らかにガッカリしている姿に俺は酷く罪悪感を感じる・・・


「で、ですが、少々落ちますが化粧品は充実させるようにしますね、日持ちもしますし、きっと出来ると思います。

・・・あっ、そうだ、お近付きになった記念にこれをどうぞ。」

俺は化粧水を呼び出し、アマテラス加護のチカラを込める。


「お肌に合うかはわかりませんが先程話した手製の化粧品の1つです。

使う際はまず少量を肌に当てて、違和感が無いことを試してください。」

「ありがとうございます!!」

ルエナは満面の笑みを浮かべる。

このあまりの表情の変わり方が可愛らしく感じるのだった。


「あ、あの!私にもいただくことは・・・」

「私にも!!」

ルエナにあげたせいか、多数の令嬢が化粧品を求めて話しかけてくる。


「静まれなのよ!おとうさんが困っているのよ、そんなに沢山きたらダメなのよ。」

シモが押しかけて来た令嬢に圧をかけて距離を取らせる。

「こ、これは失礼しました、少々取り乱してしまいましたね。」

先頭にいた女性が少し咳払いをして恥ずかしそうに謝罪をしてくる。


「大丈夫なのよ、この場合悪いのはおとうさんなのよ。

おとうさんは女性の扱い方を考えるべきなのよ。」

珍しくシモから批判がくる。

俺はシモをダッコして、優しく撫でる。

「うにゅ?ダッコなのよ♪気持ちいいのよ。」


「確かに安易にあげるべきじゃなかったかもね。

でも、それなら・・・」

俺は人数分化粧水を出して、同じように加護をこめる。

「みんなに行き渡ればいいんだよね。

みなさん、用意が出来たので一人一本ずつお取りください。」

「ありがとうございます。」

おのおの嬉しそうに礼を言いながら化粧水を受け取っていく。


「うにゅ・・・違うのよ・・・その対処はダメなのよ・・・

でも、気持ちいいのよ。

ダッコは人をダメにするのよ。」

シモは俺の胸元に顔をうずめながら幸せそうな表情で眠りにつくのだった。

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