第669話 話し合い
「あらためて、ヨシノブ先程は娘を含めて魔族が失礼を致しました。」
リリスは深々と頭を下げる。
「いえ、お気になさらず。」
「そうもいきません、この事は正式なお詫び状とともに賠償致したく思います。」
「・・・なんでそこまで?
俺が言うのもなんですが、人族と魔族にはかなりの隔たりがあるのでしょう?
俺に正式な謝罪などすれば国が荒れるのでは?」
「確かに魔族と人族には根深い偏見がございます。
実際、過去に何度も戦を行い、互いに少なからずの被害が出ております。」
「それこそ、あまり関わらない方が、俺達はこの地で何かしようとは思ってませんので。」
「それだと困るのです、ルーカス商会が取扱う商品は既に無くてはならないもの、あなたと仲違いすればルーカス商会も当然引き上げるのでしょう?」
「まあ、そうなるかも、でも、フォルサもいることだし、多分維持すると思う。」
「それでは足りないのです。
私としてはこの街にも支店を出してもらいたいですし、他の街とて、希望している所は数多くあります。」
「うーん、とはいっても、見る限り、人には厳しいような・・・」
「確かにロシナンテを含み、無能な男共があなたにしたことは許せないと思います。
ですが、二度とこのような事が無いように拷も・・・もとい調教・・・いえ、そう教育しておきます。
ですので、どうか検討だけでも・・・」
「うーん、でもなぁ、輸送とかで襲われると被害が出るしな・・・」
リリスは熱心に言っては来るものの、俺はあまり乗り気ではなかった、信用しているフォルサの所ならまだしも、他の場所になるとどんな無理難題を突き付けて来るものがいるかわかったものでは無い。
現に魔王に呼ばれて会いに来ただけで戦闘に移ってもおかしくない事態になっていたのだ。
どうなるかわからない状態で支店などという話にはならない、
「そうですか・・・それなら私の娘、サタナスにとっては妹にあたる者を人質として差し出します。
そうすれば、魔族の暴挙を止める事になるでしょう。」
「人質なんていりませんよ。」
「いえいえ、ファイさんのようにお側においてもらうだけでも信用を得ることになるでしょう。
クラルこちらに来なさい。」
クラルと呼ばれた少女はリリスの横に立つ。
「この子はクラル、私の二人目の娘です。
ほらクラル挨拶を。」
「はじめまして、ヨシノブ様。
紹介にあずかった、クラルともうします。
え、えーと、歳は15歳で、趣味はお茶と琴を・・・」
「いやいや、お見合いじゃないんだが・・・」
「あっ、すみません、緊張しちゃって。」
「あらあら、クラルったら、顔を赤くしちゃって・・・
どうでしょうヨシノブさん、クラルは見た目も可愛いし、まあ少し胸が寂しいのは残念だとおもいますが。」
「お母様!!む、胸は関係ないのでわ!!」
クラルは頬を膨らまし抗議する。
「確かに可愛らしい方のようですが、先程も言いましたけど、私は既婚者ですので、女性をどうこうするつもりはありませんよ。」
「ええ、わかってますよ。
ただ、友人としてお連れくだされば、魔族との架け橋として第一歩を踏み出してもらえないでしょうか?」
「・・・わかりました、ただしこの街に出す支店についてはそちらで輸送と店舗運営をお願いします。」
「ありがとうございます。
信用出来る者に店舗を任せる事をお約束します。」
俺とリリスは握手をかわす。
「さあ、宴ですよ、みんな今日はめでたい席です、ヨシノブさんに失礼の無いようにおもてなしを行ってください。」
リリスの声で後ろに控えていた楽団が軽やかな演奏を始め、明るい雰囲気で宴が始まるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます