第668話 助けて

俺がフォルサに呆れられている中・・・


「何の騒ぎですか。」

奥からサタナスに似た、年上の女性が出てくる。

「母上。」

サタナスの言葉から女性の立場からわかる。


「・・・サタナス、今日は大事な客人をもてなしているはずでは無かったのですか、それなのになんですか、この状況は!」

女性は謁見室の状況を見てサタナスを叱る。


萎縮しているサタナスに代わりロシナンテが声を出す。

「リリス太后様、これは増長した人族に罰を下すところにございます。

少々、お目溢しくださいませ。」

「ロシナンテ、誰がそのような事を命じたのです!

サタナスですか?」

リリスはサタナスを睨む。

明らかに怒っている視線にサタナスは慌てたように弁明する。

「わ、私ではない、私は待てとさっきから言っている。」

「ロシナンテ、では貴方は誰の命令で勝手な真似をしているのです。」


「それは・・・魔族の未来の為にございます。」

「つまり、そなたは魔王の命令も、私が出していた手出し無用の命令も自身の判断で破ったということだな。」

「そ、そのような、言い方ですと語弊がございます。

私は魔族の為に・・・」

「魔王の命令を聞けぬ者などに魔族の未来を騙るな!」

ロシナンテはリリスに一喝され、肩をすくめる。


リリスの一喝で謁見室には静寂が訪れる。

その中、ぞろぞろとご婦人たちが室内に入ってくる。

「これ以上男共に任せておけません、この一件は私達で行います。」

「おい、何を勝手な・・・」

反対の声をあげようとした男は婦人の一人の睨みで声が小さくなる。


「あなたに任せていたら取り返しのつかない事になりかねません、無駄にプライドが高く認められないのなら口を出さないぐらいの分別はつけなさい。」


「えーと、この方達は?」

俺はサタナスに聞こうとしたのだが、代わりにリリスが答える。

「あなたがヨシノブさんですか?私はリリス。

先代魔王の妻にして、魔王サタナスの母にございます。」

「これはご丁寧に、自分がヨシノブですが、この方達は?」

「そこの役たたず共の妻達にございます。

この度は遠方からよくお越しくださいました。」

「はぁ・・・」

「我々はヨシノブさんを歓迎致します。

さあ、奥にもてなしの用意が出来ておりますのでこちらにお越しください。」

俺達はリリスに連れられて奥に案内されそうになる・・・


「えーと、あの人達は?」

俺はそれぞれの妻に睨まれて小さくなる男達を呼び指す。

「お気になさらず、マトモな話も出来ないのですから後で罰を与えておきます。」

その声に男達は軽く身震いする。

「サタナス、あなたもですよ。魔王のクセに貴族風情にいいようにされて恥を知りなさい。」

「母上、でも・・・」

「でもじゃありません、今一度王としての在り方を叩き込みますからね!」

「そんなぁ・・・」

「さあ、ヨシノブさん、お恥ずかしい姿を見せましたね。

ささ、こちらに来てください。」

泣きそうなサタナスを放置して俺たちは奥の部屋に案内されるのだった。

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