第657話 帰国

終戦したことで俺は一足先に帰ってきていた。

「ルーズさん、お願いがありまして・・・」

俺は戦争の処理の報告とアナベルの事を頼む。


「ふむ、アナベルをそちらに配属か、本人もその気なら構わん。

ルクスもいることだし、問題も無かろう。」

ルーズは思ったよりアッサリとアナベルの転属の許可を出す。


まあ、今でもルクス経由で多数のマインズ王国兵士が近くにいるから今更といえば今更か。


こうして屋敷にアナベルがやってきたのだ。



子供達・・・

「マックスの奴、哀れだな。」

「オットー言ってやるなよ、まさかカルラの側付きが男性になるとはね。」

オットー、パウルはやって来たアナベルを見ながら話している。

現在アナベルはアキラから手ほどきを受けていた・・・


「もう一度お願いしたい!」

「その意気はヨシ!だが・・・

まだ未熟!」

アキラに何度打ちのめされても向かっていっていた。


「そのような腕前だから、一人で大事な者を守れんのだ!」

「くっ!」

「悔しいか!悔しいならそれを力に変えろ!」

アナベルは歯を食いしばり、アキラに食らいつく。


「・・・よくやるよな。」

俺はボロボロになっていくアナベルを見て驚愕する。

「あそこまではしたくないなぁ・・・」

リョウも同じ気持ちなのか、遠巻きで見ている。


アナベルはポーションを使い身体を治してはアキラに向かい、またやられての繰り返しで修行している。


「リョウ、ヨシノブ、何を見ている!お前らもこんか!

3人で連携を取れ!」

「「えっ!」」

思わぬ飛び火が飛んでくる。


「今後、3人で戦うこともあろう!互いの手札を知っておかんか!」

「そ、それなら、こちらで見てまして・・・」

「体験せずに何がわかる!サッサとかかってこい!」

俺とリョウも巻き込まれる形で修行に参加させられる・・・


2時間後、俺達は精根尽き果て倒れていた。

「お二人共、見事な腕前ですな・・・」

アナベルは1時間前には動けなくなっており、話せるぐらいまでは回復していた。


「アナベルさんも最初でここまで出来るのはすごいよ。」

「いや、まだまだですな、私が抜けた後の方が激しくなっておりましました。

アキラ殿は私の為に手加減してくれたのでしょう。」

「手加減出来るなら、俺達の時もしろよな、そう思うだろう?」

リョウは俺の方を向いて言うが俺は答えを避ける。

・・・そう、リョウの後ろにアキラが立っていた。


「どうやら孫の育て方を間違えたかのぅ、性根を叩き直す必要があるな。」

「ゲッ!ジジイ!」

振り返ったリョウに木刀が振り下ろされる。

リョウは慌てて横に転がり、避ける。

「爺さん、修行は終わりだろ!」

「延長戦だ、ほれ、しっかりせんと痛い目に合うぞ。」

アキラの斬撃は俺にも飛んでくる。

「なっ!なんで俺まで!」

俺も即座に立ち上がり、木刀で受け止める。


「疲れたフリをして修行を終えようとするからじゃ。」

「いや、マジで疲れてるって。」

「問答無用、動けぬ時には動けぬ時の動き方がある、それを覚えるのじゃ!」

「いーやーだぁー」


俺の思いとは別に1時間の修行が追加されたのだった・・・

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