第607話 オコなアマテラス

宮木に電話を代わられ、俺はアマテラスと話すしか無くなる。

「え、えーとアマテラスさん、何があったのでしょうか?」

「あら、ヨシノブ聞いてください、私を欲望に満ちた目で見るだけでなく、触ろうとしてきたんですよ。」

アマテラスの口調から不機嫌なのが伝ってくる。


「えーと、そいつらをどうしたのですか?」

「ポイしちゃいました。」

「・・・どこにですか?」

「最近いいゴミ箱を見つけたんです。そこに纏めて放り込んでおきました。」

俺には嫌な予感しかしない・・・


「大丈夫ですよ、ヨシノブ、あんなゴミを地球上のどこかにポイしたら、他の神に怒られちゃいますから、ちゃんと配慮しましたよ・・・

あっ、でも、分別は忘れちゃいました。

まあそれぐらいはいいでしょう。」

「地球上じゃない?」

俺は嫌な予感しか残らない。


「大丈夫です、もう帰って来れない身ですからね。

もしヨシノブが見かけたら燃やしておいてください。」

アマテラスの怒りは大きいようだ、飛ばされた議員の命を認めていなかった。


「宮木さん、ダメですね、彼らはもう日本にもしかしたら地球に帰る事すら出来そうに無いです。」

「ヨシノブさん、もう少し頑張って交渉を、さすがに野党議員が国会で行方不明なんて冗談にもなりません。」


「だけどなぁ・・・あの人に逆らえる訳ないから。」

ヨシノブとしても諦めていた。


残された野党が騒いでいるが宮木は答える事が出来ず壇上でオタオタしていた。


「うるさいですね、静かになさい。

国の行く末を決めるのです。

冷静に話しなさい。」

アマテラスの言葉に野党を含めて全員が静かになる。


「あの者達は我が国の民にあらず、我が国に必要無いから追放したのです。

文句があるなら私に言いなさい。」


「・・・恐れながら、砂原代表、いえ、先程の者達は何処に行ったのでしょうか?」

野党の石白議員の一人が勇気を出して質問する、彼は砂原に推薦され議員になった身だった、少なからず恩を感じており、聞かざるわけにはいかない。


「そなたの勇気に免じて伝えましょう、あの者達は異世界に行きました。

そして、私の許可なくこの世界に帰ることはありません。」

「それはあまりにも無体な・・・彼らはまだ何もしてなかったではないですか。」

「神たる私に欲情を持つことだけで万死に値する、ましてや、触れようとするとは許せるはずがありません。」


石白はアマテラスの言葉に、ふと不思議に思う。

アマテラスはたしかに見たこともないような程の美女だが、自分は欠片も欲情を持たない。

何故砂原は欲情をもったのだろうか、自分が枯れているだけなのか・・・


「貴方は私の子です、親に欲情を持たないようなものです。」

アマテラスは当然かのように言う。

「しかし、砂原議員もその国籍的には日本人というか・・・」

「何故私が国籍で判断すると思うのです?

我等神が判断するのはその身に流れる血と、神に捧げる信仰心です。この二つなくして何故庇護されると思うのですか。」

アマテラスの言葉はテレビを通して日本国民の多くが聞くことになる。

無神教の多い日本人が、改めて自身の信仰心を見つめ直す切っ掛けになるのだった。

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