第582話 フユの板挟み

「日本政府が招待状を欲しがっている?」

フユが嫌そうな顔をしながら、日本政府からの伝言を伝える。

「うーん、とはいえ日本政府に招待するような人いないしなぁ・・・」

俺も考えはするが留学生モトキの件もあり、あまりこちらに呼びたくなかった。


「ヨシノブさんの気持ちはよくわかります、ただ私も立場的に伝えるぐらいはしないといけませんので・・・」

フユが凄く申し訳無さそうに話している。


日本政府はどうでもいいが、フユはこちらに来てから子供達と打ち解け、いろいろ面倒をみてくれている。

俺が断るのは簡単だが、それだとフユの立場が悪くなるだろう。

ここはフユの顔を立てておくか。


「わかったよ、日本政府に招待状を出すよ。」

「いいんですか?」

「フユさんが板挟みになるのはしのびないからね。」

「私に気をつかってもらわなくても・・・」

「いつも子供達を見てくれているお礼だよ。」

「はぅ、それなら別の物が・・・」

フユは願望が小さい声で漏れる。


「うん?何か言った?」

俺は聞き取れなかったのでフユに聞き返したが。

「いえいえ、ご配慮ありがとうございます。

この旨日本政府に伝えておきます。」

フユはお礼を述べたあと、連絡をしにいくのだった。


「・・・というわけで、政府に招待状を送ります。」

フユは宮木総理に連絡をいれる。

「フユくん、ご苦労さま。」

「本当に苦労しましたよ、せっかくの信頼をこんな事に使うなんて・・・」

フユは小さい声で文句を言う。


それもそのはず、コツコツ貯めてきた信頼を政府の為に使わされるなんて、ヨシノブさんは貯めた信頼を盾にすればきっと異世界残留も認めてくれると踏んでいたのに、それを政府の為に使うなんて・・・


不満タラタラであった。


「フユくんが不満に思うのはわからなくもない、だからこの件はボーナス査定につけておくよ。」

宮木はフユの気持ちも汲みボーナスアップで不満を抑えようとするのだが、そもそも異世界に残ることを第一に考えているフユの気持ちにすれば、日本円が増えてもあまりうれしくないのだった。


「私のボーナスより、絶対にヨシノブさんに迷惑をかけないでください。

これ以上は無理です。」

「わかっている、今回は気をつけて人選をする。」

宮木自身もヨシノブから信頼が無いことはわかっている。


今回はなんとしても成功させなければならないと心に誓うのだった。

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