第556話 死刑の報告
モトキの罪が正式に確定したのでヨシノブの元に使者が来ていた。
「死刑で確定ですか?」
「はい、王たるヨシノブ殿の名を騙った事、貴婦人の装飾品を自らの欲望で汚し、あまつさえ売り払った事から死刑が妥当との事です。」
「重い気もするけど・・・いや、裁判結果に口を挟むのは良くないか、フユさん、それでいいのかな?」
俺は裁判結果を聞き、重いと思いつつもマインズ王国が決めたことに口を挟む気は無かった。
だが一応日本政府の代表として来ているフユにも確認をとる。
「かまいませんよ、他国で犯罪を犯すような者を庇う気はありませんから。」
「いいの?日本政府は結構叩かれるんじゃ?」
「そもそも、ここに来る際に誓約書を書いているんです、それなのにヨシノブさんに迷惑を書ける事をするなんて・・・」
「わかった、ルーズさんに承諾したことをお伝え下さい。
あっ、でも死刑になる前に一度会わしてもらえるかな?
遺言ぐらいは家族に知らせてあげたいと思うし。」
「お会いになるのは問題ありません。」
使者はすぐに承諾する。
元々、言われているんだろうと予想はついた。
「だめなのよ、牢屋におとうさんは行かせないのよ。」
シモは俺の足に張り付き行かさないようにしている。
「シモ?どうしたの?」
「にゅ、おとうさんが会う必要は無いのよ、フユが会うべき相手なのよ。
おとうさんはおウチでおかあさんと一緒にいるべきなのよ。」
シモの言葉に少し考える、たしかに最後の言葉を伝えるのは日本に帰るフユが聞いておくべきかも知れない。
「フユさん、モトキさんの面会お願いできますか?」
「ええ、これも日本政府としての仕事ですね。
お会いしてきますけど、牢屋に行くのは少し怖いので護衛を出してもらえますか?」
「もちろんだよ、オットー、フユさんの護衛を頼めるかな?」
「わかった。ちゃんと見張っておくよ。」
俺はオットーに護衛を任せてフユを面会に送り出すのだった。
「死刑囚モトキ、面会が来ている、こい。」
牢屋の中で死刑に怯え、絶望に震えていたモトキは顔を上げる。
「さっさとこい!」
「は、はい。」
モトキは救助に来てくれたと期待を持ち慌てて兵士が待つ入口に向う。
「鎖をつける、抵抗したらその場で死刑になるからな・・・」
モトキは兵士に鎖をつけられ不満な表情になるものの、ここから出られると思えば我慢することは簡単だった。
「ここだ、変な真似をすると死刑になる。大人しく座っていろ。」
案内された部屋は部屋の真ん中に鉄格子があり、室内で2つに分かれているような感じだった。
モトキの後ろには自分を連れてきた兵士が二人立っており、鉄格子の向こうには入口と思われる扉があった。
「なぁ、兵士さん、俺を助けに来た人は誰なんだ?」
「助けに?おかしな事を言うやつだな、死刑囚のお前が助かる訳がないだろ?
まあ、面会に来たのは身形の奇麗な女性だったからな、どこかの貴族じゃないか?」
「・・・貴族?」
モトキは少し考える、貴族の女性に知り合いはいない。
だが待てよ、この前どこかの貴族と面会した時に誰かに見られたのか?
そして、自分の溢れる知性に一目惚れ・・・
いや、それより俺の価値に気づいた者が雇う為に来たという方が普通だな。
どこまでも自分に都合のいいように考えながら、扉が開くのを待っていた。
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