第523話 カズトの地獄、初級

他の留学生が見学に行っている中、カズトは・・・


走らされていた。


「ひぃ、む、むり、しぬ・・・」

「死ぬと言って死んだものはいない、さっさと走れこのウジ虫が!」 

最初、アキラの元に連れて行ったのだが、あまりの非力さにハートの所に送られ、基礎体力作りを行わされていた。


「くそっ、なんだよこれ、走るだけで強くなれる訳ないじゃないか。」

休憩の最中、地面に寝転がるカズトの口からは文句ばかりがででいた。


「こんなの無理だよね・・・」

ふと女の子の声がしたのでふりかえると、金髪の女の子の姿とチラリ白い布が見えた。

「うわっ!ごめんなさい。」

「うん?なんで謝るの?

私はルナ、イギリス人で異世界に飛ばされて来た者よ。

貴方はショウの友達のカズトくんだったかな?

はい、これどうぞ。」

ルナはスカートの中を見られた事に気付かず、持ってきたスポーツ飲料を手渡す。


「あ、ありがとう、ルナさん。

貴女もショウみたいにこっちに来てしまったの?」

「ええ、気が付いたらここに来ていたわ。

そして、ハートくんに走らされて・・・」

ルナは遠い目をしていた。

「アレって意味があるのでしょうか?」

「走ること?」

「はい。」

「うーん、私にはわからないかも。 私は最初に1回だけで、それ以降はやってないから。

あっ、でも運命を感じる事は出来たわ。」

ルナはヨシノブとの出会いを思い出し、頬を赤らめる。

女っ気の少ないカズトは頬を赤らめるルナの表情に見とれて目が離せなくなる。


「そこのウジ虫、休憩は終わりだ、いつまでだらけている!」

ハートの声が響く。

「くっ、少しぐらいいいじゃないか。」

「あはは、頑張って。」

ルナは笑って励ます。


「うん?そこにいるのはルナ訓練生ではないか、久しぶりに特訓を受けに来たのか。」

「ち、違います、通りかかっただけです。」

「遠慮はいらない、訓練を受け給え。」

「遠慮します!!じゃあね、カズトくん。」

ルナは慌てるように逃げていく。

その慌て方が面白く、カズトから笑いが溢れた。


「笑うとはまだまだ余裕があるようだな、重りをつけて走れ!!」

ハートの厳しい声がグランドに響く。

カズトはルナが見ているのでは無いかと、歯を食いしばりカッコいい所を見せようと努力するのであった・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る