第521話 冒険者ギルドを出て・・・
「マックス様に訴える?
どうぞご自由に、しかし、マックス様が取扱われるとは思いませんが。」
ジュリオは冷たくあしらう、ジュリオもマックスがカルラに入れ込んでいることを知っており、そのマックスがオットーのひいてはヨシノブ側につくのは火を見るより明らかだった。
「くっ!後悔するなよ!」
ギルドマスターは苦々しい表情をしていたが、オットーは留学生を連れて何食わぬ顔で冒険者ギルドを後にする。
「あの、オットーくん、あれで良かったのですか?」
フユは人をあっさり殺した対応が良かったのか確認する、その表情は少し青いものがあった。
「ええ、ここでは普通な事です。
皆さんも心してください、おとうさんから日本の事は聞いていますが、ここは日本みたいに甘くありません。
スキを見せれば、攫われ奴隷として売られてもおかしくない世界です。
屋敷の中ではルールさえ守れば安全ですが、外に出れば何が合ってもおかしくないとかんがえてください。」
オットーはフユに答えつつ、全員に聞こえるように話す。
「もし、街に出たければオットーくん達に頼めばいいということ何だね。」
コウが確認の為に質問する、
彼とは異世界で独自に研究したいこともある、必要な物を見て回るのに屋敷だけでは足りないと考えていた。
その為に街に、それこそ様々な場所に行ってみたい、屋敷の中だけなど考えたくもなかった。
「僕達に頼まれても答えはNOです。
僕達はあくまでおとうさんの指示だから貴方達を案内しているだけです。
もし、何処かに出掛けたいならおとうさんの許可を取ってください。」
「つまり、ヨシノブから許可を取れば君達は僕達の護衛に付くと言うことだね。」
コウが答える前にモトキが質問をかえす。
「・・・おとうさんの許可が出ればですね。」
子供達の共通認識として、モトキは既に要注意人物として上げられていた。
子供達がモトキをヨシノブの元に案内する事は無いのだ。
「なるほど、それなら滞在期間中、彼らをいつでも使えるように話しておこうじゃないか。
これで我々は自由に異世界を探訪できるな。」
モトキは高笑いをする。
「モトキ、さすがにいつでもという訳にはいかないだろう、相手に迷惑すぎる。」
「何を言ってるゲンザイ、我々はこの滞在期間中に調べなければならない事が数多くあるのだ、毎回ヨシノブの許可など貰っていたら時間がいくらあっても足りん。」
「・・・気持ちはわかるが、とはいえ、ヨシノブさんに何も見返りが無いのに私達はそれをどう要求すると言うのだ?」
「日本の技術向上の為だぞ、政府でも、源グループからでも資金は潤沢に出るじゃないか。」
「ヨシノブさんに日本円での交渉は無理だ、彼はこの世界の住人だぞ。
それに少なくとも源グループはヨシノブさんが不快に思うような事に予算を出すことは無い。」
ゲンザイはハッキリと源グループはヨシノブに敵対する意志が無いことを伝える。
この場にオットーもいる事も有り、ハッキリ断言することで関係悪化を防ぐ狙いもあった。
「ケチくさい企業だな、それなら政府から出るからいいさ、なあフユさん。」
「私はその件に関しては解りかねます。
私は友好関係を築いて来るように言われてますが、技術向上の施策については何も聞かされておりません。
ですので、予算があるかどうかも全く解りませんよ。」
フユにしても全く預かり知らない話であり、モトキが何処から指示を受けているかわからないが自分に関係無い話だと切って捨てる。
そもそもフユとしては折角異世界に来れたのだ、政府の意向など知らない、何としてもこちらに残れる手段を模索することに忙しかった。
「フユさんも知らんのか、まあいい、オットーくん、屋敷に帰ったらヨシノブの元に案内したまえ、何人か借り受けてやろう。」
モトキは上から目線でオットーを見ている。
その視線はオットーを不快にするのには充分であった。
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