第516話 歓迎
屋敷を案内されて広間に戻るもヨシノブの姿は無かった。
案内していたリミは他の人に確認した結果・・・
「おとうさんは体調が悪くなった為に先にお休みになったようです。
皆さんの歓迎会の準備は出来ていますので、会場に案内します。」
本来ヨシノブから一言貰う予定ではあったが、アキラの修行で疲労困憊になったヨシノブとリョウがすぐに回復出来るとは思えず、予定を変更して歓迎会を行うことにしたのだった。
「さっきまで健康そうだったのに体調不良なんてどういうことだ?」
モトキは訝しげに質問してくる。
「予定に無かった事が起きたのです。」
「歓迎会に出れないほどとは余程具合が悪いのですな。」
「おい!モトキ止めろ、失礼だぞ!」
ゲンザイがモトキの言葉から相手を馬鹿にしているような発言がみられたので止めに入る。
「ゲンザイ、だってそうじゃないか、我々は日本、いや世界の研究者を代表して来ているんだ、それを代表者が仮病で歓迎会を欠席など馬鹿にしているにも程がある。」
「具合が悪くなる時もあるだろう、リミさんコイツの言うことは我々の意志ではない。
ヨシノブさんにはお大事にと伝えて欲しい。」
「わかりました、おとうさんには伝えておきます。
モトキさん、一度された発言は取り消せませんから、私達子供会一同、手厚くおもてなしさせてもらいます。」
リミがモトキを見る目は非常に冷たいものだった。
「さ、さっさと案内しろ。」
リミの目に負けたのかモトキは少し慌てたように先に進もうとする。
「・・・こちらです。」
リミは再び案内を開始するのだった。
案内された部屋に入るとサリナが出迎える。
「皆さま、遠いところからようこそお越しくださいました。
私はヨシノブさんの妻、サリナと言います。
主人は少し体調を崩してしまいましたので、席を外してしまっていることをまずはお詫びします。」
サリナは最初に頭を下げる。
「サリナさん、ヨシノブさんの体調は如何なるものなのでしょうか?
病気持ちとかなら、これからも気をつけないといけませんからね。」
「モトキ、お前は黙れ!」
ゲンザイがモトキを止める中、
「失礼しました、私は倉田フユと申します。
ヨシノブ氏の故郷、日本の政府から派遣されたものです。
先程のこちらの人員の非礼をお詫びします。
ヨシノブ氏の体調が悪い中、来訪してしまった事も重ねてお詫び致します。」
フユは頭を深く下げる。
ヨシノブの妻を名乗るこの女性は間違いなく発言力のある方だろう、こちらの印象はモトキのせいで悪くなったが、謝罪をして自分の印象を良くしなければ、異世界から即時送還もありえる。
フユは異世界に来れた幸運を捨てるつもりなど欠片も無かった。
「お気になさらず、それと先程病気を心配なされましたが、
主人は訓練で疲労しただけですから、明日には回復致しますのでご安心下さい。」
サリナはモトキの質問にも笑顔で答えるのだった。
それぞれ、挨拶を済ませて、食事にうつる、
歓迎会は立食形式を取っており、自由に歓談出来るようになっていた。
留学生同士交流も深めるもよし、異世界について誰かに質問することも許されていた。
「モトキ、何だよここに来てからの態度は。」
ゲンザイはモトキを注意していた。
ゲンザイとモトキは大学の同級でもあり、若い時から切磋琢磨して競い合って来た仲であった。
「だってよ、考えてもみろよ、ヨシノブって奴、元はただのサラリーマンだろ?
それが異世界に来てチート貰って、対した苦労も無しで、こんな豪邸に住める身分だぞ。
嫌味の一つでも言いたくなるだろ?」
「お前は冊子を読んでないのか?
何があっても、失礼をするなよ。」
「事実だろ?悪口を言ったわけでもない。」
「それでもだ、言い方一つでも相手を不快にさせるんだ。」
「ふん、研究者が事実を言わないでどうするんだ。
そもそも、歓迎会に代表が出ない事自体、かなりの非礼ではないか。」
モトキは歓迎会に出ない非礼に自身を軽く見られたように感じ怒りを覚えていた。
周囲はなだめるものの、怒りは不満へと繋がっていくのだった。
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