第512話 全員で

「ミキは引き止められなかった?」

ショウとミキは久しぶりに二人であっていた。

「うちは大丈夫、お金を渡したら喜んでいたよ。」

「うーん、それもどうなんだろう。」

「うちはいいのよ、だいたい私に興味なんて無いんだから。

それよりショウは?」

「うちも大丈夫、父さんが認めてくれたよ。」

ショウとミキはお互いに状況を知らせ合い、異世界に帰る事を確かめあった。


「ミキ、ショウさんいいところ悪いけど、私も異世界に行くからね。」

カエデも合流する。

「カエデはモミジさんの所に帰ったほうがいいんじゃない?」

「ううん、私には待ってる娘がいるからね、早く帰らないと。」

「え、えーと、モミジさんの許可は取れたの?」

「大丈夫、お母さんもすぐに帰れなくなるわけじゃなさそうだし、好きにしなさいって言ってくれたよ。」

カエデの説得にモミジは呆れつつも認めるのだった。


「あとはマイだけど・・・」 

「マイちゃんは無理じゃないかな。」

タケフミの最期を知らされており、マイにとって兄の仇になるアキラがいる所に帰るかは微妙な所だった。


「あれ、みんな集まってるの?」

3人で話しているとマイもやって来る。

「マイ、家族との団らんはいいの?」

「うん、お父さんとお母さんにちゃんと会ってきたよ。」

「・・・マイちゃんはどっちで暮らすつもり?」

ショウは聞きにくかったが確認の為に質問する。


「私も異世界で暮らすよ、というかこっちで暮らせないかな・・・」

「マイ何かあったの?」

「お父さん、無職になってたし、家も引き払ってて、あと親が離婚してたの・・・」

マイは遠い目をして語っていた・・・


タケフミと共に移住しようとしていた父親のユウキは仕事を止めて、引っ越す為に様々な物を処分していた。

そして、日本でマイを待つと言っていた母親のミユキと離婚したのだった、ユウキとしては現地で若い女を捕まえればいいと軽い気持ちでの離婚だった。

しかし、結果はアキラの手によりタケフミは死に、移住は出来なくなる、ユウキが持っていた資産もミユキへの慰謝料と財産分与で半分は消え失せており、再就職も上手くいかず、資産を喰い潰しているところだった。

それにユウキが自分を見る目が怯えており、到底一緒に暮らせる状態では無かった。


ミユキにしても、離婚後、働き始めたのだが、バツイチ子持ちの上司と付き合い始めたようで、同じ歳の男の子が面会に来ていた。

上司の方は人が好さそうないい人で再婚に反対する気は無いが、子供の方はマイをジロジロ見てきて、その目がいやらしくマイは受け入れられなかった。

ミユキは一緒に暮らそうと言ってくれたが、相手の家族と一緒に暮らしたくない自分が再婚に反対してしまいそうなのでミユキと暮らすことを拒否した。


こうして、マイは帰る家をなくしたのだ。


「マイ、大丈夫だよ、私達が一緒にいるよ。」

ミキはマイを抱きしめる。

「ミキ、私にはみんなしかいないよ・・・」

ミキに抱きしめられマイは涙を流す。


「大丈夫、みんな異世界に帰るから、一緒に暮らそう。」

カエデもマイを抱きしめる、ショウも雰囲気から抱きしめようとするが・・・

「ちょっと、ショウ!セクハラだよ!ほら、離れて。」

ミキはショウに抱きつかせなかった。


「ちょ、セクハラって、慰めるだけだよ。」

「駄目に決まってるでしょ、私は浮気を許すつもりは無いからね。」

「浮気じゃないよ。」


ショウとミキのやり取りにみんながクスッと笑うのだった。

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