第509話 ショウの友人
「ショウ、異世界ってどんなところなんだよ。
それに何だよここ、お前いつからビップな生活を・・・」
外を出歩けないショウの為にリョウはショウが希望する友人カズトを屋敷に連れてきていた。
「ここは連れて帰って来てくれた人の家だよ、世間が騒がしいから家に帰れなくて。
それに異世界か・・・夢を持つのはいいけど、ヨシノブさん、僕達を助けてくれた人がいなければ、すぐに死んでいたよ。」
ショウは目を輝かせる友人に釘をさす。
「コウキは死んだんだよな?」
「うん、再会する前にもう・・・」
ショウはコウキを思い表情が暗くなる。
「・・・ツバサもなんだよな?」
「ツバサはコウキと事情は違うけど死んだことに違いはないよ。
カズトは異世界でチートをもらっても絶対に増長してはダメだよ、特に刀を持ったお爺さんと少女の前で増長したら、たとえ不死の身体を手に入れても殺されるからな。」
「不死でも殺されるって意味わかんねぇ。」
「不死には不死の殺し方があるって言ってた。
俺はカズトの死ぬところなんて見たくないよ。」
ショウは真剣な目でカズトを見つめる。
親しい友人で生きているのは異世界に行かなかったカズトだけになっていた。
「大丈夫だって、それに飛ばされてもショウがいるだろ、何とかなるって。」
「そんな甘いものじゃないんだ!カズト、俺がいる時ならまだいい、でもいないときに致命的なミスをすればすぐに死ぬことになるんだ。」
ショウは必死にカズトに伝える、甘い考えで異世界に行くと死ぬしかない。
言っている事に間違いはない・・・
だが、ショウが不安視している1番の存在は味方のはずのアキラとシモだった。
「お前がそこまで言うなら行っても気をつけるけど、それよりタケフミはやっぱ死んだのか?
日本に帰ってから一度会った時には、ずいぶん傲慢なやつになってたけど・・・
ショウが言うのはそういうことなんだろ?」
「うん、タケフミは踏んでいけないものを踏んでしまったんだ、俺も向こうにいる時は止めていたけど、もう聞く耳も持ってくれなくて・・・」
「そうか・・・」
二人の表情は重い、親友とも呼べる三人が亡くなったのだから。
カズトは話題を変えようと明るく話を切り替える。
「まあ、ショウは帰って来たんだ、これからは二人で頑張ろうぜ。」
「何を頑張るんだよ、それに俺は、向こうに行こうと思っているんだ。」
「えっ!折角帰って来れたんだろ?なんでまた異世界に行くんだよ。」
「向こうでお世話になった人に何も恩返し出来ていないんだ。俺はその人の力になりたいと思っている。
それに日本にいても珍獣扱いされるだろ?
見世物になるぐらいならな。」
「そんな事言うなよ。そりゃ今は世間もうるさいかも知れないけど、すぐに静かになるよ。」
「それもわかっているよ、でもさ、日本にいるより向こうの方が楽しいんだ。
そりゃ、危険な事はあるけど、生きている実感があるんだ。」
異世界の生活を思い出し、ショウの表情はイキイキとしていた。
「ズルいなぁ・・・そんな顔を見せられたら日本に残れなんて言えないじゃないか。」
「ごめんカズト、でも何処にいてもお前は親友だからな。」
「・・・なぁ、俺も異世界に行けないか?」
「カズト?」
「だってそうだろ?親友はみんないなくなるし、こっちに残っても、進学して平凡なサラリーマンになるだけじゃないか。
それなら、異世界で活躍したい。」
「帰って来れなくなるかも知れないし、命も危ないんだぞ?」
「それでもだよ、それにショウがいるなら危険性も少しは減るだろ?」
「本気なのか?」
「本気だよ。」
「それなら、相談してみるけど、カズトは親を説得しろよ。
誘拐みたいな形では連れて行けないからな。」
「わかった!すぐに許可をもらうから!」
ショウは真剣なカズトの頼みを断れなかった。
電話でヨシノブに相談することに・・・
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