第413話 噴火
「山が火を噴いている?何処の山だ?」
俺は窓から周囲を見るが噴火している様子は無かった。
「ここじゃないんです、テオドールが訓練を兼ねた飛行をしていたら発見した模様で、場所はビザ侯爵領となります。」
「なんだって!詳しく聞かせてくれ!」
オットーの報告にルクスが慌てたように立ち上がる。
「はい、ビザ領、領都ズムの近くの山でクシズ山が噴火しております。
詳しくは映像が届いているのでルクス兄確認しますか?」
「ああ、すぐに見せてくれ。」
「では、こちらに。」
オットーはルクスを連れて管制室に向かう、俺も膝に乗っていたシモを抱きかかえ、オットー達について管制室に向かった。
「これは・・・」
映像を見たルクスは言葉を失い顔を青くしていた。
山の頂上からマグマが吹き出しており、川のように流れている。
その光景は地獄のように感じた。
子供達も見慣れぬ光景に声が出ないようだった。
「テオドール、火山灰で飛行機が故障する可能性がある、すぐに離れてくれ。」
俺は火山灰がエンジンに入り、再度固まる事を懸念してテオドールに離れるように伝える。
「ヨシノブ!見捨てる気か!」
俺の指示にルクスは不満だったのか胸元を掴みかかってきた。
「落ち着けルクス、飛行機は火山に弱いんだ、近づくと墜落の恐れがある。
それより動く準備をするぞ、救援に向かう。」
俺の言葉にルクスは手を離す。
「すまない、どうやら動揺していたようだ。」
「婚約者の街が危険なんだ仕方ないさ、だけど落ち着いて、何事も落ち着かないと何処に落とし穴があるかわからないからね。」
「ああ・・・すまない。」
「ここはリョウに任せる、頼めるか?」
「わかった、留守番しておくさ、ヨシノブ、気をつけて行けよ。」
「ありがとう、防衛人員以外はいずもに乗り込んでくれ、搭乗後すぐに出発するよ。
それとリミはリズ経由でマインズ王国に火山の噴火と救援に向かうと連絡をしてもらえるかな?」
「わかりました、すでにリズさんにはこちらに来るように連絡をしております。」
リミの返事が終わった瞬間、リズも部屋にやって来た。
「山が火を噴いたと聞いたのですが・・・」
リズが部屋に入ると正面のモニターに噴火している様子が映し出されていた。
「なんですかこれは・・・」
あまりの衝撃からかリズは座り込んでしまった。
「リズ、座り込んでいる場合じゃない、すぐに父上に連絡をしてくれ。
ヨシノブが救援に向ってくれる。
許可を頼む!」
ルクスは慌てたようにリズを無理矢理立たせる。
「待って、腰が・・・」
リズは腰が抜けたようでうまく立てない。
「そんな場合じゃない!早く立て!」
「ルクス、少し落ち着け。リズさんは俺が預かるから、お前は準備していずもに乗れ。」
俺はルクスを止めてリズと離させる。
「しかし!」
「いいから、最悪連絡しなくても救援にむかう。
少々遅くてもルクスもいることだし問題はないだろ?」
ルーズ王の許可があるのが一番だが動けなくなったリズを無理矢理動かしてまで急がなくていいと思っていた。
「すいません、すぐに・・・」
リズも状況を理解して何とか動こうとしてはいるが・・・
「無理はしないで、身体が大事だからね。
リズさんが動けるようになってからでいいよ。
リミはリズさんについてあげて。
カルラ、状況報告とルーズ王への伝言をマックスに手紙で書いて向こうの屋敷に送って、マックスならすぐに動いてくれる。
正式な話はリズさんから伝えてもらうにしても連絡は早い方がいい。」
「わかりました。すぐに。」
カルラはパソコンで手紙を書こうとしたが、
「カルラ、手書きで頼むよ、そっちの方が効果が高い。」
「えっ?送信するのでは?」
「書いたものをスキャンで取り込んで送ってもらえる?」
「おとうさんが言うならそうしますね。」
カルラは迷うことなく手書きで書き始める。
「さあ、みんな動くよ。」
全員が慌ただしく動き出すのだった。
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