第399話 アーロン敗れる
アアを倒し、前進を進めていると戦闘機から何かが投下されるのがわかった。
いや、投下されたのが見えたわけではないが、投下された者が斬った魔物が鮮血に変わり、降り注いでいたので気づいたというのが正しいか・・・
「リョウ、あれは・・・」
「爺ちゃんだろ、あんな事出来るのは・・・」
「すごいのよ、お空からズバズバってしてるのよ♪」
シモは目を輝かせて見ていた。
『おとうさん、無事ですか?ロンメル以下戦車隊、到着しました。すぐに戦闘に移ります。』
マルドラド王国に滞在していたブルーノから連絡が入った。
「ブルーノ、さっき降りたのはアキラさんかい?」
『はい、シモが傷ついたと聞いて、お怒りになられて、こっちに帰ってきた途端見つけたと言って降りられました。』
「飛行機は途中下車出来ないはずなんだけどね。
ありがとうブルーノ、長旅で疲れたろ、基地に入ったら休んでくれ。」
『いえ、すぐに戦闘に移ります。』
「気持ちは嬉しいが・・・」
『大丈夫です。』
ブルーノはこれ以上止められる前に通信を終えた。
「はぁ、どうしてみんなのこんなに戦闘狂になってるんだろ・・・」
俺はため息を漏らす。
「戦いの刻を知ってるだけだろ、今は戦わないとな。
さあ、俺達も爺ちゃんに合流しよう。」
リョウは俺の背中を叩き、前進を促す。
勝利まであと少しのところまで来ていた。
「さて、魔法使いよ、覚悟は良いな。」
アキラはアーロンに刀が届くところまで来ていた。
「わ、わたしを斬るのか・・・」
「当然じゃな、大事な孫を傷つけた事を悔やむがよい。」
「ま、まってくれ!私はただ魔法を極めたかっただけで・・・そ、そうだ、私なら異世界に帰る魔法を作る事が出来るはずだ!
貴様も帰りたいだろ。」
「帰路ならなんとでもなる、その為に猫と蛇も捕獲してきたのだからな。」
「猫と蛇?そんな物で異世界の扉は作れんぞ。」
「作れる、お前が何を知っているかは知らんがこの方法で帰れるじゃろ。
まあ、この方法を選んだのは往復するためじゃがな。」
「往復?まさか貴様は異世界と繋げる気か!」
「繋げはせん、じゃが往復出来んと可愛い孫に会えんでは無いか。」
「・・・孫に会いたいだけで異世界を越えるのか?」
「当然じゃ、まあ日本で婆さんも待っていることじゃしな、一度帰らねばならぬのが寂しいところじゃ。」
「狂っている・・・貴様の頭はどうかしているのか!」
「狂っているじゃと?漢が全てを望んで何が悪い。
出来んと思うから自分に限界を作るのじゃ。
必要な事はやり切る意志じゃ。
そのためなら全ての物を斬る。」
アキラの言葉に迷いは無かった。
「ありえない!」
アーロンはアキラを否定する、そんな事が出来るとは思えなかった。
「どう思おうと関係あるまい、お前はここで死ぬのじゃからな。」
「この私を殺せるとでも・・・」
アーロンはニヤリと笑うと転移の魔法を発動する。
「この私が何も用意していないとでも思ったか!
次こそはお前の大事な孫とやらを始末してやる。」
「・・・ワシの孫をなんだって。」
アキラが軽く刀を振るうとアーロンが展開していた魔法陣がかき消される。
「なっ、発動中の魔法が!」
アーロンは狼狽する。
「ワシの大事な孫に手を出そうとは・・・生かしておけんなぁ。」
「ひぃぃ!」
アキラの殺気を至近距離で受け、アーロンは震え上がる。
「お前など輪廻の輪にすら行かせぬわ、喰らえ魂喰。」
アキラの刀から口が現れ、黒い手がアーロンに纏わりついてくる。
「は、離れろ!ウインドカッター!」
アーロンは黒い手を切ろうと魔法を放つも、魔法すら黒い手は掴み口に入れていく。
「な、なんだ、これは・・・」
黒い手に引き摺られ徐々に口が近付いてくる。
「は、はなせ!やめろ!」
アーロンはもがくも黒い手がアーロンを離す事は無い。
それどころか、待ちきれないかのように幾つかの手はアーロンを引き千切り、口に運び入れていく。
「ぎゃあぁぁぁ、や、止めてくれ、頼む、いや頼みます、どうか命だけは・・・」
「安心せい、喰われても意識は残しておいてやる、命は奪わんからのぅ・・・」
「えっ、そ、それって・・・」
「未来永劫苦しむがよい、気が向いたら止めをさしてやろう。」
「や、止めてくれ、せめて一思いに!」
「ワシの孫を傷つけた罰じゃ、救いがあると思うな。」
「い、いやだぁぁぁぁぁ・・・」
アーロンは絶叫と共にアキラの刀の中に消えていった。
ヨシノブ達が合流するのはアーロンが消えてからしばらくしてからになるのだった。
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