第374話 二人の目覚め

「うおぉぉぉ!!」

ビルバインの渾身の上段斬りをショウは受け流す。

「そんな単純な一撃で倒せると思わないでください。」

「やるな、若いのに中々の腕だ!」

アキラの見立て通り二人はいい戦いを繰り広げていた。

ショウは副官に任じられている事で、自衛隊の体術が身についていた、それをアキラの修行により身体に染み込まされ、さらに自力を鍛えられていた。


しかし、アキラには不満だったようで・・・

「お主ら、身体に魔力を纏わんか!」

アキラから石礫が飛んてきて二人に被弾する。

「魔力を纏うと言われてもなぁ。」

ショウとビルバインはお互いを見合わせる。

二人とも魔力を発動出来ておらず、魔力の使い方などは知らなかった。


「人は誰しも多少の魔力を持っておる、それを引き出しておるか、そうでないかの違いじゃ。」

「アキラさん、そう言っても使い方どころか有ることすらわからないのですけど?」

「これだから近頃の若いものは・・・仕方ない、ワシが引き出してやろう。」

「そ、それって子供達がやっていた心臓に針を刺すとかいうやつじゃ・・・」

ショウは青い顔をしていた。


「針?何を生ぬるい事を言っておる、ワシの殺意を心臓に叩きつけてやる。

止まらなければ魔力に目覚めるわい。」

「・・・本気ですか?」

「ワシが冗談を言うとでも?」

ショウに冷や汗が流れる。


「ビルバインさん、気合を入れて!油断すると死にますよ!」

ショウはすぐさま覚悟を決め、気合を入れる。

「な、なに、本当にされるのか?」

「絶対にしてきます!」

ビルバインもショウの言葉を受け、気合を入れる。

その瞬間、恐ろしい程の恐怖が二人の身体を、いや、心臓を襲ってくる。

あまりの恐ろしさに心臓が止まりそうになるが二人とも必死に堪える。


「このままじゃ、もたない・・・」

ショウはそう思った時に胸の奥底から力が湧き上がるのを感じた。

「これだ!」

ショウは湧き上がる力をそのまま身体の周囲まで引き上げ、纏うことに成功する。

「ふむ、目覚めか・・・これでお主も戦士として歩みだしたな、さてビルバインよ、お主はどうじゃ?」


ビルバインも恐怖に襲われつつも立ち上がる。

「負けるか!俺はビルバイン、王家を護る盾だ!この程度の恐怖にまけるか!」

ビルバインも己の矜持の為に魔力を呼び起こし恐怖を跳ね退ける事が出来た。


「ふむ、二人とも見事じゃ、さあその力でかかってくるがよい。」

アキラが刀を構える。


「・・・この展開か。」

ショウはため息をつくが、アキラが言う以上戦うしか道はない。

「ビルバインさん、行きますよ。」

「ビルバインでかまわん、行くぞショウ!」

「ビルバイン、最初から全開だ!出し惜しみするな!」

ショウの言葉でビルバインが真正面から突っ込んでいき、ショウがフォローにまわる。

アキラは二人の連携攻撃を受け流す。

「もっと、力をこめんか!一撃が軽い!」

「うおぉぉぉぉ、喰らえ、魔力斬だぁぁぁぁ!」

ショウは剣に魔力を込めた一撃を放つ、

「少しはマシじゃのぅ。」

「二人ならどうだ!」

ビルバインもショウに続き剣に魔力を込めた一撃を放つ。

「マシな威力ではないか。」

アキラは嬉しそうに二人の剣撃を捌いていた。






・・・一方チャムは二人の共同作業を息を荒げて見ているのだった。

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