第373話 ショウとビルバイン

「ショウくん、おつかれ。」

アキラと共に帰ってきたショウにねぎらいの言葉を掛けるが返事がない・・・

「ショウくん大丈夫か?」

「ヨシノブさん!訓練は・・・訓練はもう嫌です!」

ショウは俺に縋り付くように訴えかける。

「ショウくんもついに味わってしまったか・・・」

「船の上で暇だからと・・・」

俺が平和を満喫している中、ショウは地獄にいたようだった。


「ショウくん、一日も早くアキラさんを日本に帰そう。」

「はい!」

俺とショウは固く握手を交わすのだった。


ヨシノブと別れたあと、ショウは広間でだらっとしていた。

「ショウ、お疲れですね。」

「チャムか・・・ちょっとね・・・」

「元気をだしてください。」

「あはは・・・今は少ししんどいかな?

まあ、疲れているだけだから。」

チャムと話していると外から訓練の声が聞こえてくる。

今日はマインズ王国軍が訓練に来ているようだった。

多くの悲鳴とともに兵を叱咤する近衛騎士団長ビルバインの声が聞こえてくる。

「立て、それでも栄光あるマインズ王国近衛騎士団か!」

「ならば、お主からかかってくるのじゃ。」

「アキラ殿、いざ、参る!」


・・・ショウは元気だなぁと他人事のように聞いていた。


「少しは手応えがあるが、ワシの相手はつとまらんのぅ・・・おい、ショウ!どこじゃ!」

アキラの声が聞こえてショウは震え上がる。


「・・・」

「ショウ、アキラさんが呼んでるよ?」

ショウがうつ伏せているとチャムが聞いてくる。


「ショウどこじゃ!おい、誰かショウを引き摺ってでも連れてこい!」

庭から物騒なアキラの声が聞こえてくる。

ショウは重い腰を上げるのだった。


「アキラさん、何でしょう?」

「遅いぞ!何をサボっておる。」

「屋敷の奥にいたんですから時間がかかってしまいました。」

「まあ良い。ビルバインとやら、このショウと手合わせするのじゃ、お前達の腕なら丁度よい。」

ビルバインはショウを見て少し不満そうにする。


「まだ、子供ではないですか。」

「お主の腕はまだそれぐらいじゃ。」


はっきりと言われた為に不満がさらに上がる。

「ならば、私が上だと知らしめましょう。ショウとやら剣を取れ。」

ショウもアキラが見てる手前逃げるわけにもいかない、逃げると何が待っているか恐ろしかった。

「僕も負ける訳にはいかないのです、やる以上本気でいきます。」

ショウとビルバインの戦いが始まった。


横でチャムがどことなく嬉しそうにそれを眺めていた・・・

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