第335話 ウインが纏めると・・・

「殿下、これは反逆にございます。どうかあのジジイを始末する許可を・・・」

「その体たらくで勝てる筈がなかろう。」

「近衛騎士で取り囲めば必ずや!」

「私はヨシノブと争う気は無い。ヨシノブの娘に失礼な言をしたのだ。

致し方ない事と諦めよ。

なお、この件についてはあらためてお前の罪を問う。皆、この者を捕縛せよ。」

ウインは暴走したタスクを見捨てる。

そしてタスクは他の騎士の手で捕縛されるのだった。


「ヨシノブ、シモちゃんすまない。私の警護が失礼してしまった。」

「いえ、あの護衛の方は当然の事かと。

まあ、あとの失言は些か余分かと思いますが。」

「あれは言わずとも良い言葉であった・・・」

ウインは落ちているタスクの手を見る。


「こちらもいきなり斬りかかって申し訳ない。」

「ルクスから話は聞いている。

ヨシノブも苦労しているのだろう。」

「ええ・・・味方ですが1番の危険です。」

「そうだ、1度アキラ殿の訓練を騎士団に受けさせて貰えぬか?

さすればこの国の者達もヨシノブ達の強さがわかるはずだ!」

ウインは良い事を思いついたかのような笑顔を見せる。


「や、やめといた方がいいですよ・・・」

「迷惑だったか?」

「いえ、アキラさんは引き受けてくれると思いますが・・・」

「ならば良いではないか、我が国の騎士団が強くなり、意識改革にもなろう。

いっそ貴族達にも経験させるか。」

「やめて上げてください、文官の方が耐えれるものではありませんから。」

「そうか?ならば見学ぐらいにしておこう。

どうだ、引き受けてくれないか?」

「わかりました、引き受けるのはいいですが・・・

私は止めましたよ。」

「わかっている。交代で全騎士団に受けさせてもらおう。

できれば定期的に行いたいな。」

「・・・1度行ってから話をしましょう。」

「そうだな、うん。

しかし、雨降って地固まるとはこの事だ、失礼な事をしてしまったが結果互いに理解が深まる事になるとはな。」

ウインは上機嫌になる。

だが、俺には地獄に送り込む悪魔に見えていた。

そして、送られる生贄達は穏和に事が片付いた事に胸を撫で下ろし、目の前の食事に舌づつみをうつのだった・・・

迫る地獄に気付かぬままに。

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