第309話 伝言

「ルーカス商会からルイスに伝言?」

ローラン王国のスコール公爵領に出店していたルーカス商会から連絡が入る。


「正確にはルーカス商会のルスさんが助けた女性からとの事ですが。」

「リミ、内容は聞いていい話なのかな?」

「問題ないと思います、ルイスさん経由で助ける為に動いてほしいとの依頼のようです。」


「ルイスを呼んでくれ、みんなで話し合おうか。」


ルイスを部屋に呼び、話し合いを開催する。

「ルイス、このティアという女性を知っているのか?」

「はい、イゾルデ子爵令嬢ですね。

基地のあった近くに領地があるはずです。」

「その彼女がローラン王国の森で裸で逃げていたと・・・何があったんだろう?」

「わかりません。ですが彼女の性格から妄言をいうような方では無いと思います。

何か重大な事があったのかと・・・」


「ここにいてもわからないな、直接話してみよう。

サリナ・・・いや、リョウここを任せていいか?」

俺は身重のサリナでは無く、リョウに指揮権を託す。

「それは構わないが、俺が行こうか?」

「いや、もし何かあれば俺の方が逃げやすいだろ。」

「まあ、そうだよな、その自衛隊装備を呼び出せる力なら逃げるぐらいは簡単か。」

「そういう事だ、この屋敷は任したよ。」

「了解した、護衛にシモちゃんを連れていけよ。あの子なら何が来ても守れるはずだ。」

「シモか、サリナについていて欲しいところなんだが・・・」

「お前の方が危ないだろ?」

リョウの薦めもあり、俺とシモ、アキラの三人で向かうことにした。



「君がティアさん?」

俺はティアに合う。

「はい、あなたがヨシノブさんですか?」

「そうだよ、ルイスと合わす前に話を聞いておこうと思ってね。

話してくれるかい?」

「はい・・・」

ティアは自身に起こったこと、そしてディゼルが何かをしようとしている事を伝える。


「タクミとディゼルか・・・」 

名前の響きからタクミが日本人であり、先日帝国海軍を呼び出したものだろう。

そして、ディゼル、王族という彼が力を持って狙う相手は・・・


「シモ、アキラさんもう少し詳しく調査します。

ティアさん、あなた達の保護をします。暫くはここで休んでいてください。

ルスさん、彼女達をお願いします。

くれぐれも丁重に。」


「かしこまりました、ヨシノブさん。」

「ありがとうございます!」


ルスは召使いのように礼をして、二人の保護を了承してくれる。

そして、ティアは深々と頭を下げて礼を言ってくる。

「ティアさん、今はゆっくり休んでください。

あなたの心の傷の深さを男の俺がわかるとは言えません。

ですが、生きている事に意味があるのです。

どうか、早まった真似だけはなさらないように。」

「ヨシノブさん・・・ですが、私は・・・汚れた身に・・・」

「ティアさんは汚れてなんていませんよ、俺からみたら美しいままだ。

でも、そんな暗い顔をしてたら折角の美しさがもったいない。

上を向いて、世界を見てください。」

「ヨシノブさん。」

ティアは顔を上げ、俺と目を合わせる。

「さあ、笑ってください。

あなたには笑顔が似合うと思いますよ。」

俺はティアの目を見つめて笑いかけるのだった。



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