第297話 帝都からの使者

「ソックス、久しぶりだな。」

「トロイ、久しいな、こっちに来るなら連絡をくれよ。」

ソックスとトロイは学生時代からの友人であり、ソックスは歓迎する。

「陛下の命令で調査に来たついでに寄ったんだ、急だったものでね、連絡が遅れたよ。」

「陛下の命令か?何の調査か聞いてもいいのか?」

「特段機密でもないから、構わない。

この近くで賊が化け物に惨殺される事件があってね、その調査なんだ、ソックスは何か知らないかい?」

「・・・化け物?惨殺・・・」

ソックスの脳裏にシモが滞在している屋敷の異形の物がちらつく。

「ソックス、何か知っているな?」

「た、たぶん、関係が有りそうな奴らを知っている。」

「誰なんだ、何か知っているなら教えてくれ!」

「今、私の別邸に滞在している者達なんだが、異形の者達を使役しておるようで、先日屋敷で見かけたのだ。」


「ソックス、案内してくれ!」

「あ、あまり関わらない方がいい・・・」

「これは命令なんだ。

知ってて放置は出来ない。」

「・・・わかった。ただし、絶対に怒らせないでくれ。

あと少女の両親を悪く言うのは禁止だ。」

「なんだそれは?まあいい、約束する。」


ソックスは約束を信じ、屋敷を訪れる。

事前に連絡を入れ、リョウとの面談を果たしていた。

「ソックスさん、そちらの方は?」

「こちらは帝都から来たトロイと言う、私の友であり、此度皇帝陛下の命令を賜り、こちらに来たようなのだ、少し話してもらえぬか?」

「話すぐらいはいいですよ、それでトロイさん、何が聞きたいのでしょう?」


「はじめまして、トロイと言います、単刀直入に聞きます。

あなた方が賊を討ち滅ぼした人達ですか?」

トロイは屋敷に入り、異形の者達の姿を見て確信していた。

「賊?村を襲っていた奴等なら倒しましたね。」

「おお!あなた方が倒されたのですね。」

「何か不都合がありましたか?」

「いえいえ、ただ誰が倒したかわからなかったものでね、調査をしていたのです。

この事は陛下に奏上して、恩賞を得れるように手配致しましょう。」

トロイは未知の力を持つ者たちを恩賞で縛り、帝国に取り込もうと画策する。


「それには及びない、私達は恩賞欲しさに倒した訳ではない、それに知り合いの迎えが来るのを待っている身だ、帝都とやらに行って行き違いになるのは面倒だからね。

お気持ちだけ受け取っておくよ。」


「それは困る、陛下のお気持ちを無駄にされては今後生きにくくなりますよ。

ここはどうか恩賞を賜ってください。

邪魔な物ではないでしょう?」


「あはは、ご冗談を、俺が迎えを無視して帝都に向うなんて言ったら殺されてしまうよ。

何せ1分1秒すら待てない子がいるからね。

もし、邪魔するなら全てを斬り伏せてになるけどそれでもいいのか?」


「なっ?我等、帝国を侮辱する気か!」

「待て!トロイ、約束を忘れるな!この者達と争うな!」

「しかし、ソックス!この者は陛下の恩恵をいらんと言っているのだぞ!」

「こらえろ!それに陛下が恩賞を下すと仰った訳ではない。

この者達はすぐにこの地を去るであろう、無駄に争わず、平和に過ごすのだ!」

「ぐっ・・・」

トロイは悔しさに唇を噛むが、ソックスの言う通り、恩賞の命令は受けていない。

ただ、帰れば命令が出るのは間違いなかった、その為に帝都に連れて行きたかったのだが・・・


「話はそれだけですか?

あなたもここの鬼達を見たでしょう。

あれが暴れ出すと被害は桁外れになるでしょう。

そして、あれを制御するのは親に会いたい一心の子供です。

大人の事情なんて関係ありません。

ただ泣き出すと、とんでもない事になる。

私は犠牲者を出すのは好まないが、鬼や祖父は犠牲者など気にしませんよ。」


「あなたがあれを制御しているのでは?」

「違いますね、友達の娘の部下ですから、もし本気で怒ると俺の友達しか止めれなくなります。

いいですか、今は非常に不安定なんです。

ヘタに刺激するとこの町はガレキに埋もれますよ。」

「・・・」

トロイとソックスは言葉が出なくなる。


「親が迎えに来るまで刺激せずに放置しておく事をおすすめします。」

リョウの言葉を最後にトロイとソックスはただ帰るしかなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る