第285話 帰国前夜

シモが来てから一ヶ月がたった。

「シモちゃん、そろそろヨシノブの元に帰るかい?」

リョウがふとそんな事を言い出した。

「うにゅ!シモ帰れるの!」

シモはリョウに駆け寄る。

「絶対とは言えないけど、別の世界の入口を見つけたんだ、そこを経由したら帰れるかも知れない。」

「行くのよ!すぐにいくのよ!」

シモは早く帰りたいようだった。


「待って!シモちゃん帰っちゃうの?」

アズサは凄く寂しそうな表情を見せていた。

「アズ姉ちゃん、ごめんなさいなのよ。それと色々お世話になってありがとうございますなの。

でも、シモはおとうさんとおかあさんの所に帰りたいのよ。

アズ姉と一緒にいるのは楽しかったけど、お家に・・・お家に帰りたいのよ。」

シモも別れは寂しいが、家に帰りたい気持ちが強かった。

目に涙をためつつも、アズサに別れを告げる。

「シモちゃん・・・お姉ちゃんこそごめんなさい。

おとうさんとおかあさんの所に帰りたいよね。

私がわがまま言ってた、でも、帰っても私の事を忘れないでね。」

「アズ姉・・・」

シモとアズサは泣きながら抱き合っていた。


その日の夜は盛大なお別れ会を開いていた。

アズサが全力を使い、シモに食べてもらいたい料理やお菓子を全国から急遽集め、楽しんでもらおうとしていた。

「アズ姉、どれも美味しいのよ。」

「喜んでもらってよかったわ、あら、口にアンコがついてるよ。」

アズサはシモの口を拭く。

アズサはシモの横から離れず、一分一秒別れを惜しんでいた。


「ねえ、リョウくん、アズサさん大丈夫かな?」

あまりのシモへの関わり方からミウも遠巻きに心配している。

「帰った後がね・・・まあ、フォローするけど、ミウもよろしく頼むよ。」

「うん、アズサさんが元気ないのは私も嫌だし。」

リョウとミウはアズサの心配をしていたのだった。


一方、アキラは・・・

既に旅支度を整えていた。

いきなり呼ばれた前回と違い、今度は装備を整えていたのだ。


「爺ちゃん、その装備・・・シモちゃんと異世界に行くのか?」

「シモちゃん一人だと心配でな、リョウはワシが帰るまでしっかり修行しておくのだぞ。」

リョウは拳を握り小さくガッツポーズをする。


「わかった、こっちは大丈夫だから、ヨシノブによろしく。」

「あやつ、修行をサボっておらんか心配じゃのう・・・」

どうやらヨシノブの修行は避けられないようだった。


食事も終わり、寝る時・・・

アズサはシモを離さず、一緒に寝ることになったのだった・・・

「アズ姉といっしょなのよ♪」

「シモちゃん可愛い。」

シモは狐のキグルミパジャマを着て、タマと一緒にアズサのベッドに入るのだった。

「お姉ちゃんの匂いなのよ〜」

「シモちゃん・・・」

アズサはシモの頭を撫でていた。

シモはアズサに抱きつきながら、しだい眠りにつく。

アズサはシモの寝顔を夜遅くまで眺めていたのだった・・・

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