第272話 酒呑童子との出会い

酒呑童子は強い魔力をもつシモに興味を持っていた。


現在の地球は魔力が低下しており、妖怪のたぐいが住むには向かない世界となっており、多くの物が闇に潜み、ほそぼそと少ない魔力を取り合いながら生きていた。

シモと契約を交わせば、ほそぼそ生きなくてもいい魔力が手にはいる。

だが、鬼の頭領たるもの安易に従っては示しがつかない、力量をはかってから従いたいと願う。


シモを見つけた夜、シモが宿泊するホテルに人化して訪れていた。

「そこの童よ、そなたは強者と見た、手合わせ願う。」

「うにゅ?手合わせなの?楽しそうなのよ。」

「かたじけない、我は酒呑童子と申す、いざ!」

「酒呑さんなのよ。シモから行くのよ!」

シモは単純に間合いを詰め、居合斬りをしかける。


「ぬぅぅ!」

酒呑童子は何とか受け止める。

「やるのよ♪酒呑さん強いのよ。」

「速さには驚いたが、これぐらいならば受けれん事はない。」

「うにゅ?もっと速くできるのよ?」

「えっ?」

「いくのよ〜」

シモの掛け声と共に、姿が消える。

そして、酒呑童子が気づいた時には目の前に刀があった。

斬られる!

酒呑童子がそう思った瞬間、シモの刀が止まる。


「童よ何故止めた?」

「うにゅ?手合わせなのよ、斬ったらダメなのよ。

シモは手加減出来る、レディなのよ。」

シモは胸を張る。


圧倒的な力の差、勝負を挑んだのに闘う事も出来ぬほどの差に酒呑童子は笑うしか無かった。


「わはは、これはいい、完敗である。」

「シモの勝ちなのよ♪」

「我に勝ったものに従おうと思う。我が忠誠を受けてもらえるか?」

「ちゅうせい?そんなのより友達になるのよ。」

「友達?」

「そうなのよ、シモはこの世界であまり友達が出来てないのよ。

でも、それだとシモが寂しい子だと、おとうさんに心配されるから、沢山の友達を紹介したいのよ。」

「わかった、我で良ければ生涯の友として主に忠誠を誓おう。

そして、我が部下達も受け入れて貰えないだろうか?」

「友達ならいいのよ、いっぱい欲しいのよ!

・・・はっ!でも、どうやって連絡とったらいいのよ!」

「ならば、これを渡そう。」

酒呑童子は宝玉を渡す。

「これを持ってキーワードを言えば我が主の元に参ろう。」

「うにゅ!便利なアイテムなのよ!この世界は進んでいるのよ!」

シモは目を丸くして驚いている。


「たしかに珍しい物ではあるな。して、キーワードは?」

「そうなのよ、キーワードは・・・『手の鳴る方へ』なのよ。」

「わかった、何かあれば呼ぶがよい、主の手助けをいたそう。」

酒呑童子は姿を消す。


「凄いのよ!姿が見えないのよ!」

シモは周囲をキョロキョロ探していた。

「手のなる方へなのよ。」

「主、何用か?」

「出てきたのよ、驚きなのよ。」

シモは気配のしない所から現れた、酒呑童子に驚く。

「主に渡した宝玉は我を喚び出す物なのだ、何処にいても駆け付ける事が出来る。」

「うにゅ、便利なのよ。」

「いつでもお呼びください。我が力は主の為に。」

酒呑童子はシモと契約を交わすことでシモから溢れ出る魔力を受け取る事ができたのだった。


そして、酒呑童子が従える鬼の軍勢もシモの傘下に・・・

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