第160話 ローラン王国

ローラン王国、侵攻軍兵士達

「おい、聞いたか、俺達の侵攻先の領主ヨシノブ様らしいぞ。」

「ヨシノブ様って、あの地震の時に救済してくれた方か?」

「ああ、そうだ、あの御方の所にこれから攻めるらしい。」

「ええ!ちょっと待てよ、そんな事したら俺達どんな顔して王都に帰ればいいんだよ!」

「・・・だよな、俺も家族を救われたし、戦いたくないけど、兵士にならないと家族に飯を食わせられ無いんだ。」

「それはそうなんだけど・・・」


兵士は王都で食糧難の為に兵士になった者が多かった。

二人の会話に別の兵士が話に入ってくる。

「でも、あの方ならわかってくれるんじゃないか?」

「はぁ?攻められてわかってくれる人なんていないだろ?」

「あの方は自身を刺した奴も許すような方だぞ、俺達も同じように生きる為に攻めるんだ。

もし、何かあっても許してくれるさ。」


「いやいや、それはない・・・だろう。」

「わからないぞ、何せ聖者様だからな。

俺達は仕方なく攻めているんだ、きっとご理解される筈だ。」

「そ、そうだよな、国の命令だもんな、俺達個人の意志じゃ無いんだ。仕方ないよな。」

兵士は話ながら自分達の都合のいいように解釈を続け、攻め込む事を正当化しようとしていた。


一方王都ローラでは・・・

王ユリウスの元に報せが届く。

「何?戦争反対の集会が行われているだと?」

戦争先にヨシノブがいる事を知った住人達が抗議活動を始めていた。

「兵士で鎮圧出来んのか?」

「かなりの数がおります、無理矢理静めても良い結果にならないかと。」

「仕方ない、抗議活動の代表に伝えよ、此度の戦は国を裏切った反逆者を討つものだと、他の者を傷付ける予定は無いと伝えるのだ。」

ユリウスは口先で鎮める事を選ぶ。

大量の兵士と口約束にて一旦は活動は終息するが王都内には不穏な空気が漂っていた。


そんな中、ユリウスに朗報が届く、勇者ツバサが発見されたのだ、

崩壊した大聖堂の前で蘇った所をガレキ撤去に向かった者が見つけたのだ。

助けられたツバサはユリウスの元に連れてこられる。

「おお、ツバサ殿、いかになされたのだ、マインズ王国に行ってから行方がわからなくなり心配しておりましたぞ。」


「うるさい!俺はあの男に・・・」

ツバサは震えながらも憎しみの炎を燃やす。

「あの男とは?」

「ヨシノブだ!ヨシノブのせいで俺は!」

「ヨシノブ?・・・ああ、あの者ですか、それなら此度の戦で始末致しましょう。」

「ヨシノブを始末するのか?」

「ええ、侵攻先で立て込もっている者がヨシノブですからな。

我が国もあの男に振り回されております、ここらで因縁も無くしたいものですからな。」


「これはいい!俺も行くぞ!間近で奴の死を見てやる!・・・いや、俺の手で奴をズタズタに引き裂いて殺してやる!」

「ツバサ殿が行ってくださるなら心強い、是非お願いしたい。」

「直ぐに向かう!案内を用意しろ!」

「誰かツバサ殿を軍まで案内致せ!」


こうした復活した勇者ツバサはヨシノブの基地に向かうのだった。

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