第159話 マルドラド王家

「ヨシノブさんの使者が来ていた?」

王太子ディーンの所に報せが来たのはマロニーが帰ってからであった。


そして、事の次第を聞くと・・・

「何と愚かな!敵に攻められて援軍を送ろうともせんとは!」

ディーンは騎士団総長ゲラに直接聞きに行く。


「ゲラ、これはいったいどういう事だ!」

「これはディーン殿下。」

「挨拶などいい、それより何故騎士団が動かん!敵は攻めて来ているのだぞ。」

「それなのですが、議会から貴族が連合騎士団を結成して対処するので我等の出陣を禁止されたのです。」

「ほう、それなら援軍に向かうとの事か?」

「はい、ラードの防衛を行うつもりのようです。」


「ラードか?攻めて来るのは先にヨシノブの領地の筈だ。」

「それは・・・」

「ゲラ、正直に申せ。」

「議会はヨシノブ殿を見捨てると決断しております。」

「なんと・・・愚かな・・・」

ディーンは嘆く、

「ゲラ、騎士団は動かせないのか?」

「・・・我等は他の国境の警備を指示されておりますれば、敵の大軍に向かうだけの兵士を集める事が出来ません。

残念ですが・・・」

「くっ、となると議会に訴えるしかないのだな。」


ディーンはゲラとわかれ、議会向かうが・・・

「殿下、此度の敵は大軍、迎え討つのは困難にございます。

ここは守りの堅い町にて防衛につとめるが得策。

大事の前の小事、小さな村の事など忘れなされ。」

「しかしだな、彼を見捨てるのは・・・」

「殿下!あなたはゆくゆくは王となられるお方、たかが一人の為に国を滅ぼす気か!

ラードなら敵を迎え撃てるのです、それとも野戦にて兵士に死んでこいと命令するおつもりですか!」


ディーンは反論出来ない、確かに城で迎え撃つ方が被害が少ない。

王太子としては被害の少ない方を選ぶべきなのだろう・・・

言葉につまるディーンに議長シウーが畳み掛ける。


「殿下はまだお若い、これからも此度のような事はあるやも知れません。

此度の事でよく学ぶべきですな。


良いですか、兵士は民なのです。

殿下があの者を気に入っておられるのは知っておりますが、

王族といえど民を無闇に減らすような選択はお控えなされよ。」

シウーの言葉にディーンは反論出来ず、議会を後にするのだった。

こうしてマルドラド王国はヨシノブに援軍を送ることは無くなったのだ。

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