第82話 退却?

トートの話に何らかの方法があることはわかった。

しかし、全員は無理か・・・


俺は頭をかきながら、一先ず保留にする。

何処かで情報を得る必要があるだろう。

一度話に出てきた魔族について調べる必要があるな。


しかし、とりあえずは、目の前の課題、王都の復興についてアレクと話し合いを持つ、

「ヨシノブ殿、復興にも手を貸してくれるのか?」

「このままという訳にもいかないでしょう、取り敢えずガレキの除去ぐらいはしないと。」

「助かる。」

「除けたガレキはどこに置きますか?」

「相当数あるからなぁ、埋め立てに使うか、ヨシノブ殿指定した所に置いて貰えるか?」

「わかりました。」

俺は重機を使い、町のガレキを片付けていった・・・


1ヶ月程たったある日、アレクが俺の所に来る。

「ヨシノブ殿、困った事になった!」

「アレク様、どうなさいましたか?」

「ユリウス陛下が王都に戻って来られる。」

王都が片付いていく様子を聞き付けたユリウスは王城への帰還を決定して、戻って来ることをアレクに伝えていた。


「・・・となると、此処までですね。」

俺は区切りをつける事にした。

王なら軍を連れているだろう、これからの町の復興は国王の仕事だろうと思っていた。

そして、ヨシノブが帰国しかねない事はアレクを気付いていた。


「いや、ま、待ってくれ。陛下には私から話すから、今暫く滞在してくれ。」

「申し訳ありません、先日軍に追われましたし、逃げた先にも攻めて来るような方を信じる事は出来ません。

多少の食糧は置いて行きますので、あとはローラン王国にて行ってください。」

「あれは誤解なのだ、話せばわかるはずだ、」

アレクは引き止めようとするが、


「申し訳ありません、此処にはマインズ王国とマルドラド王国の兵士を連れて来ているのです、万が一でも襲われた場合、両国に合わす顔もありません。

ガレキもだいぶ片付きましたので我々は撤退します。」

こうして俺は帰国する事を決断した。


「ルクスさん、ルイス、マインズ王国に帰るよ、みんなお疲れ様、撤退だ!」

長かった救助活動及び復興活動が終わることに兵士は喜んでいた。


俺達がいなくなった途端に苦労をしないように港に作った集積所に食糧を多めに積み上げていく、

撤退準備を進める中、マイが言いにくそうに話しかけてくる。

「ヨシノブさん・・・」

「どうしたの?」

「お兄ちゃんをせめてマインズ王国に連れて行ってもらえませんか?」


「わかった、一時的だけど船にのることを許すよ、でも、見張りはつけさせて貰うよ。」

「ありがとうございます。」

マイは笑顔を見せてタケフミを迎えに行ったが・・・


「嫌だね!」

「お兄ちゃん!」

「俺はツバサと合流するから大丈夫だ、それよりマイも来い!」

タケフミは無理矢理引っ張ろうとするが、マイの警備についていた兵士に止められる。

「なんだよ!」

「マイ様の身を守るように言われておりますので、無理強いするなら覚悟してください。」

兵士は剣に手をかける。

「ちっ、わかったよ、マイ来たくなったらいつでも来いよ!」

「お兄ちゃんも一緒に行こうよ。」

「誰があんな奴と、アイツが土下座してついて来てくださいと言うなら行ってやってもいいけどな。」

マイは説得も出来ず戻るだけだった。


マイから事情を聞いた俺は友人というツバサの所に行くのも1つの手かも知れないと考えていた。

俺の元では反発しても友人相手なら違うだろうと、そして、その友人は勇者として優遇されていると聞く、危険もないだろうと。


だが、マイはタケフミを説得すべく、王都を離れるまで何度もタケフミの元を通ったが、

タケフミの頭の中にはツバサと合流する事しか考えていないようで少しも話を聞いてくれず、出航の日となった。

マイは悩んだ結果、ヨシノブと共に行くことを選ぶ。

「お兄ちゃん、何かあったらヨシノブさんに連絡してよ。」

「誰があんな奴に、なぁマイも来いよ。」

「いかない、ヨシノブさんの元の方がいいし、何よりツバサさんの目が怖いの。」

「お前何を言っているんだ?」

「お兄ちゃんの友達だから言わなかったけど、あの人の私を見る目がどうしても嫌なの。」

「お前、言うに事欠いて俺の友達をバカにする気か!」

マイを殴ろうとするも兵士が間に入る。

「ちっ!ああいいさ!何処にでも行けよ!

結局お前は兄より、男を選ぶんだな!あーはしたない奴だ!」

「お兄ちゃん・・・」

マイは悲しそうな瞳で見るが、タケフミに思いが届くことはなかった。


「マイ様、そろそろ出航のお時間です。」

兵士に促され、タケフミの元を後にする。


こうして兄妹離ればなれとなる・・・

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