第32話 ヨシノブの存在

「しかし、ローラン王国が探すものがヨシノブだったとは。」

「先日のマインズ王国が探されている方もヨシノブ殿なのでは?」

「そういえば、ヨシノブの事を医師とか言っておったな・・・ヨシノブを一度王都に呼び戻してくれ。代わりにもう一つ騎士団を送りラードの防備を完全にするのだ。」

「何故、もう一つ騎士団を派遣なさるのですか?」

「ラードを救うために迷わず向かったのだ、街の安全が確保されなければ呼んでも来ぬであろう。」

カームはヨシノブの思いをくみ、ラードの防衛を万全にしてから呼び寄せる事にした。


それから、二週間後。

「国王陛下、お呼びと聞きましたが?」

「ヨシノブよ、よく来た。すまんな忙しい所を呼びつけてしまって。」

「いえ、騎士団が来てくれましたので、私がやることはほとんど無かったところですので。」


「それで、聞きたい事が二つあるのだが、ヨシノブは何故ローラン王国に狙われておるのだ?」

「それは・・・」

俺は事情を説明する。

「ふむ、それは御主のせいではないな、まあ、門を破壊したのはやり過ぎだとは思うが。」

「それは、まあ・・・」


「よい、ワシが咎める話でもないしな、それでもう一つだが、ヨシノブは肺病の薬を持っておるのか?」


「はい、ありますよ。どなたか肺病になられているのですか?」


「うむ、この国ではあまり流行っていないのだが、マインズ王国の国王が病にかかっておるようでな、薬を探しておったのだ。」


「そうですか、しかし、薬を渡すには診察の必要がありますが、今の状態でラードからあまり離れたく無いのですが?」


「そうだな、戦が終わらねば向かう事も出来んか。」


「それにマインズ王国とは何処なのですか?」

俺は国の位置だけでなく名前も初めて聞いた。


「この国から見て、ローラン王国を挟んで向かい側になる。

今まであまり交流は無かったのだが、見捨てるのも心苦しくてな。」


「反対側ですか、それはあまり好ましくないですね、それにその国にどんな扱いをされるかも解りませんので。」


「まあ、悪いようにはされぬとは思うが・・・まあ、使者が来ておるから、会って貰えぬか?」


「解りました、会うだけでも会ってみます。」

こうして俺はマインズ王国第二王子ルクスと会うことになった。


「おお!貴殿がヨシノブ殿か、私はマインズ王国第二王子のルクス・マインズという、お会い出来て光栄だ。」

ルクスは丁寧に挨拶をしてくる。

「初めまして、私はヨシノブと申します。

肺病の薬をお求めとお聞きしましたが?」


「そうだ、我が父が肺病にかかってしまったのだ、先日、ローラン王国で薬を入手したのだが、分量がわからないとの事で診察出来るヨシノブ殿を探していたのだ。

どうか我が父を助けて貰えないだろうか?」


「薬を入手したのですか?」


「ああ、ローラン王に譲り受けたのだが、問題があるのか?」


「私は診察した人に薬を渡してますが、肺病以外の薬も渡していますので場合によっては違う薬の可能性もあると。」


「なんと!ならばいかにすれば・・・」


「私が行って診察するのが早いのですが、現在ローラン王国に攻められておりますれば、遠方に行くのは御容赦願いたい。」


「わかりました。ローラン王国に圧力をかけて攻めれなく致します。

もし、戦をするようなら反対側から攻める事をお約束致しますので、どうか、我が国にお越しください。」

ルクスは権限を逸脱してはいるが、必要な事と思い独断で決定していた。


「それならば・・・」


「待ちたまえ、勝手にヨシノブを連れて行かれても困る。」

カームは引き留める。


「ヨシノブもマインズ王国の実状を知らぬからな、我が国から護衛として五百の兵をつけて船で送りたいと思うが如何であろう。」

カームはマインズ王国に取り込まれる事を恐れ、娘ルイスを副官につけ、五百の兵と共に向かわせる事にした。


「其方の気持ちはわかります。是非お越しいただきたい、すぐに受け入れの手配をしたい。」

ルクスは提案を受け入れる。


「ヨシノブよ、それでかまわないか?」

「ええ、俺に問題はありません、でも、船は此方で用意していいですか?」

「それはかまわんがいいのか?」

「はい、五百の兵が乗れる船にあてはあります、ただ、寝床が足りないかも知れないので、その準備を願えますか?」

俺は船を呼び出す事にしていた。

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