第31話 話し合い?
「この度は不幸な行き違いから戦闘に発展してしまった事をお詫び致します。」
チースの元を訪れたオスカル・カクタス侯爵は開口一番謝罪から始まった。
そして、現場の暴走により戦闘が始まってしまった事を説明して、軍を撤退した上でマルドラド王への面会を希望する。
チースに断る理由もなく、護衛をつけた上でマルドラド王がいる王都ディートラストに案内する。
「この度は申し訳ありません。此が賠償金の目録となります。」
オスカル・カクタス侯爵はあらかじめ用意していた、ローラン王国が出せる金額を提示する。
それは奇襲をかけた事をふまえて充分な金額であった。
「ふむ、ローラン王国の誠意はわかった。この度は不幸な行き違いとしておさめよう。
だが、二度とこのような事が無いようにして貰おう。」
「はい、それは重々承知しております。
その為に、願わくばこの行き違いの原因となった者を引き渡して貰いたい。」
「なに?」
「その者は侯爵家の次男に重症をおわせ、王都の城門を破壊して逃走した男です。
この度戦闘を起こしてしまった者もその者を捕まえる為の事と聞き及んでおります。
勿論、戦闘を正当化するつもりはありませんが犯罪者たるその男をどうか引き渡して貰いたい。」
「そのような者なら引き渡しも検討しようではないか、してその者の情報はないのか?
引き渡せと言われても誰かわからねば答えかねるな。」
「所詮、平民の医師にございます。
マルドラド王がお知りになられるような者ではないでしょう。」
「とはいえ、我が国にいる者を勝手に連れていかれても困る。」
「ならば、ルーカス商会に匿われていると思われる平民にございます。
名はヨシノブ。」
「ヨシノブとな?彼を見知っておるがそのような真似をするとは思えん。
此方で話を聞くので、引き渡しには頷く事はできん。」
カームは穏やかに拒絶するつもりであった。
「なんと!マルドラド王国は犯罪者を匿うと仰せか!
名君と名高いマルドラド王も地に堕ちた者ですな。」
「なっ!無礼がすぎるぞ!」
謁見室にいた家臣が殺気だつ。
「これは失礼。だが、他国から見てどう思われるかお考えになられた方がよろしいのでは?」
「して、ヨシノブを捕まえて貴国はどうするつもりか?」
「貴族を手にかけた者は死罪が当然ですが、マルドラド王の顔も立てて、奴隷墜ちで許されるよう手配致します。」
「ワシの顔を立てると言う言葉はありがたいが、それでも引き渡す訳にはいかんな、我が国では何も被害が出ておらん。
犯罪者でも無いものを理由もなく渡せぬ。」
「ですから、我が国ローラン王国では・・・」
「ローラン王国でどうあろうと我が国には関係ない。
それとも我が国はローラン王国の法に従わねばならぬ理由があるか?」
「・・・くっ!何故お分かりいただけない、
犯罪者を匿った事、後悔なせれますな!」
オスカルは怒るように出ていく。
「あの様子では賠償金も怪しいものだな。」
「はい、停戦もどうなのでしょう?」
「わからん、だが防衛は解かぬようにせねばなならぬな。」
ローラン王国の使者の態度があまりにも悪かった。
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