第105話 青堀神社 22 諏佐 結子

「くそッ!何で言われるまで何故気付かなかったんだ!裏で乗っ取られそうになってたなんて!」


 菅谷が歯を食いしばり拳を握り締める。


「恐らく使い勝手の良い駒が欲しかったんだろう。諏佐は能力的に戦いには向かないかもしれないが、人を利用して支配領域を増やすのは向いている。戦いは駒に任せて支配の玉だけ拾えば良いからな」


「ま、それでも暁門君と違って限界が有ると思うけどね。何十人も操って扱うなんて無理よ、無理」


 恐らく似たような能力荻菜さんが言うと説得力があるが……経験談か?けれど、勢力の頭だけうまく操れればそこまで難しくは——いや、これは言わない方が良さそうだな。


「まあただ、単に生き延びる為にした可能性も有る。そこは本人に聞いてみよう」


 俺の言葉に菅谷が唖然とする。


「え、いや、悠長に話すんですか?操った玉男をけしかけられたりしたのに?」


「ああ。別に生きるためにした事なら別に悪いようにはしない。問題は俺と同じ目的の支配領域の順位を上げたいと考えていた場合。その時は……力尽くで諦めさせるつもりだ」






 それから荻菜さんと別れ、俺と菅谷で青堀神社の領域へと入った。今回はあくまでも話し合いのつもりなのだが、逃れるようにだけ身構えている。

 菅谷は姿を消し様子を見ているだけ。絶対に何もするなと伝えてある。


 そして、本殿前。そこに居たのは丸山、厚木、市橋——それに諏佐。彼女らは身構え、臨戦態勢に見える。


 俺は両手を上げながら近寄り声を掛けた。



「攻撃するつもりはない。俺は諏佐さん、あんたと話がしたい。」


 諏佐が睨みつけると共に、俺はまた前と同じような威圧感を感じた。


「操ろうとしても無駄だと思うぞ。恐らく俺とあんたじゃ経験値が違いすぎるんだ。そうだな……レベルとでも言えば分かりやすいか?それについては俺の仲間が既に検証済みだ」


 諏佐からの威圧感が消え、彼女は睨みつけたまま口を開く。


「……忌々しい。やっと下準備が整った所に突然やってきおって……」


「俺達に手を出して来たのはそっちが先だ。そこを言われる筋合いは無い」


「何を言う。お前のサポートが邪魔しに来たのが先だ。あの煩い小娘……追い出せないのを知っていて好き勝手な事を言いおって……」


 それについては俺は知らんぞ……?トリセツが勝手にやった事で俺の指示じゃ無いんだが……。おいおいあいつが余計なことしたせいで拗れたのかよ。


「それはすまん。でもそれはあいつが勝手にやったんだ。俺の指示じゃない」


「そんな事はどうでもいい!早くあの小娘を回収しろ!今も頭の中で騒ぎおって、耳障りだ!」


 俺はトリセツの行動を知り、額に手を当てて空を仰ぐ。


「いや、俺の指示を聞かない奴なんだ。だから戻って来るようあんたから言ってくれ——」


 俺はそこまで言っておかしな点に気付いた。頭の中でトリセツが喋っているのが分かるだと?どういうことだ?俺は夢の中に干渉して話す事は出来たが、頭の中で会話した事は無かった。


「——待て。何故あんたはトリセツと話す事が出来る?」


 俺の言葉に諏佐は首を傾げる。


「……お前はあやつから何も聞いとらんのか?私はてっきりあれだけサポート付きを調べておったから知っているものだと思っておったが」


「トリセツからはサポート付きが近くにいるという点だけだ。それも随分と分かりにくく濁されて、だな」


「ふむ……スレスレでマスターの処罰から逃げておったか。通りで。なら今更なので教えてやろう……私はこの体の持ち主、諏佐奏美すさ そうみのサポート。そして、奏美の実の母である諏佐結子すさ ゆうこだ」

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