第41話 支配の恩恵 3
建物内に入ると爺さんが待ちきれん、というばかりにそわそわしていた。外食にいく子供かよ。
だが、爺さんには悪いが食事の前にやる事が有る。
それは俺の怪我の手当て。そのまま放置してたが、頭は血が流れ固まりはしたものの、鈍痛が続いているのだ。
それでも、怪我の割には痛みが少なく感じるのは魔物を倒し続けたおかげか?
「爺さん……飯よりも先に先に俺の怪我の手当てをしてくれ。平気そうにしているがかなり痛いんだよ」
「……仕方ないのう」
爺さんは残念そうに呟く。やっぱり、子供か。
そうして来たのは、スーパー内の薬局にある包帯や消毒液が置いてある商品棚。この棚もやはりオブジェクト化しており、赤黒くなったままだ。
俺は右手に魔石を10個持ち、指先で包帯に触れる。
「オブジェクト解除」
俺がそう呟くと、瞬間的に包帯の赤黒さが消え、見慣れた物へと変化した。俺はそれを見た後に、手の中を開き魔石を確認する。
手の中の魔石は三個減り七個になっていた。解除する品物によって変化するのかもしれないが、膨大な量の魔石を消費しなかった事に俺は安堵した。
「不思議じゃのう。色々と驚かされてばかりじゃ」
「『
そうして包帯と消毒液をいくつか解除し、俺は後頭部を消毒してもらった上で爺さんに包帯を巻いて貰った。巻いていくのに手慣れていたように見えたのは、怪我に慣れているのかもしれない。
途中。爺さんはニヤニヤしながら消毒液をぶっかけようとしていたが、それは全力で止めた。フリじゃないから!本当にやめてくれ!
そして爺さん念願の食事。どうやらオブジェクト化解除も許可制のようで、爺さんでもする事が出来るようになった。流石に一人で何十も解除してたら時間が幾らあっても足りない。これは俺にとっては朗報だった。
その後——俺と爺さんは自重せずに食べたい物を解除し、一か月近くの鬱憤を晴らすかのように食べ漁った。解除した食事は、寿司のネタが乾いているなんて事もなく本当に美味しく感じ、幾らでも食べられそうだった。
当たり前に食べれていたもの。それにこれ程感動する事になるとは魔物が現れるまでは思っていなかった。
だがこの一時の幸せを忘れず大切にしていこう、そう俺は思った。
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