第32話 支配領域 5 攻略開始
俺は新たな魔物の出現について向かう途中ずっと考えていた。
このまま環境が悪くなるのであれば、やはり最低限の拠点や集団は必要になってくる可能性がある。だが、安全な拠点なんて今やどこにも無いだろう。
信頼出来るような人間——俺がすぐに考えつくのは三人の友人だった。一人はすぐに連絡が付かなくなってしまったが、残る二人の避難所は分かっている。修行に目処が立ち次第、そこへと向かうのも良いかもしれない。
ただ、どうしても気になるのが……このダンジョン化したと思われるスーパーだ。ここが魔物の発生源でも有り、更に魔物を集めている役割をしているのは分かっている。
でも、それだけなのだろうか?俺はダンジョンの攻略特典のようなものが有る可能性も、否定できないと思っている。
それを確認するにはまだ……俺一人の力では足りない。悔しいが爺さんにも協力を依頼しなければ、スーパーの入り口にも辿り着けない可能性が高い。
俺は心の中で決意を固め、爺さんへと話し掛ける。
「なあ、爺さん」
「ん?なんじゃ?」
「修行は暫く中断して、このスーパーの攻略をしたいんだ。恐らくだが、ダンジョン化したここにはきっと何か有る。それを確かめたいんだ。良ければ協力してくれないか?」
俺は爺さんが断る可能性が高いと思っていた。別に俺に対して何か恩がある訳でも無く、ただの気まぐれで稽古をつけてくれていたに過ぎない。
爺さんの表情は特に変わらず、普段通りの表情のままだった。そして、爺さんはその口を開く。
「別に構わんぞ。ダンジョンとやらは知らんが、面白い事が有るんじゃろう?」
「い、いや……別に面白い事かは分からないぞ……」
「儂の想像がつかん事なら、何でも面白いと思うがのう。お主の能力にも充分驚かされたしの」
「まあ、何かあるとしたら想像も出来なくて、科学では証明出来ないような事だろうが……」
「なら、乗った。儂も力を貸そう」
「死ぬかも知れないぞ?青いゴブリンが山程いるかもしれない」
「儂の目的を忘れたのかの。その時は華々しく散るわい」
俺は死ぬのは御免なんだが……まあ良い、爺さんが手伝ってくれるなら入り口までは余裕で行けるだろう。問題はその中がどうなってるかだな。
「よし、じゃあ決まりだな。なら今日は入り口まで行ってみよう。中の様子を見て対策を立てたい」
「心得た。ま、青いの以外はお主でも余裕じゃろ」
そうして、俺達はスーパーの攻略を目指し、入り口を目指し始めた。その道中はひたすら集まってくるゴブリンを屠り続けながら、少しずつ前へと進んでいくだけ。ただ爺さんが俺の倍はゴブリンを倒している。それが少し悔しかった。
そしてスーパーの入り口手前付近、そこには青いゴブリンと通常のゴブリン五匹が待ち構えていた。
「爺さん。あの青い奴、俺でも行けると思うか?」
「ま、今の集中力なら大丈夫かの。邪魔者は儂が相手するから、やってみると良い」
俺は青いゴブリンを目標に、少しずつ前へと進む。先に通常のゴブリンが動き出すが、爺さんのフォローも有り難無く倒し終える。
俺があれからどれだけ強くなったのか……お前で試させて貰うぞ。
俺は青いゴブリン目掛けて走り始める。すると青いゴブリンが反応し、以前警察が使っていた手作りの鉄槍を手に迎え討とうと身構えたのが分かった。
青いゴブリンは槍を引き、すぐに俺目掛けて突きを繰り出す。だが、俺の目にはそれが見えていた。以前は目で追うのがやっとだったが、俺はその軌道を読み体を捻って突きを躱す事が難無く出来た。
そのまま青いゴブリンの懐に入り、俺は刀を下から上へと斬り上げる。だが青いゴブリンが後ろに引いた事で、皮一枚程度の傷に留まってしまった。
青いゴブリンは、反撃と言わんばかりに鉄槍を横薙ぎに殴り付けてくる。俺はそれを刀で受けることで防ぐ。そしてそのまま弾き返し、鉄槍を持っていた右手を上から切り落とす。
切った箇所から噴き出す青い血。青いゴブリンは僅かに狼狽るが、それは……決定的な隙だ。俺はそのまま横へと刀を走らせると……硬い感覚を手に感じながら、その胴を二つに分けた。
そして青いゴブリンの分断された上半身は力を失うように地面に転がり、また下半身は力を失いそのまま地面に倒れた。
動きも見えたし速さにもついていけた。俺は……確実に強くなっている。
俺は消失していく青いゴブリンを眺めながら、それを——深く噛み締めていたのだった。
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