第7話
「…確かに、これはあたしのとこの札だ」
「!そうか…。やっと見つけた」
屋根裏で見つけたお札がどこのお札なのか探すこと数日。
全然見つからないから無月にどこの神社に行ってみたいか聞いて、無月がなんとなくで選んだ結構遠いところの神社に来たところ見事当たりだった。
「だけど、これは数世代前の巫女の札だね。あの子はなかなか力が強かったから、今でも鮮明に覚えているよ」
目の前にいるのはここの神社の神。
見た目は黒髪の大和撫子系の人だ。
口調は大和撫子っぽくないけど。
「これが屋根裏にあったんだろ?不思議だねぇ…」
「それと、もう一つ。箱に入ったりしてる毛むくじゃらの事、何か知らないかい?あいにく、絵とか写真とかはないんだけど」
「…それは人型だった?」
「うん。人型だったね。子供くらいの大きさだよ。ただ、手足が異様に長かった。恐らく、神への生贄が異質化したものだと思う」
「…困ったことになったな…」
考え込むような仕草をすると、ぶつぶつと独り言を言い始めた。
「…それは多分…いや、確実にあたしの不手際だ。すまない」
「話が見えないんだけど…」
「…昔、ここの近くに集落があったんだ。小さいけどね。その集落では信仰から生まれた神がいたんだけど、小さかったからか、最初の方はよかったんだけどその神の力が弱まってきてしまってね。雨が続き作物がダメになり、人々が食うに困るようになってしまったんだ。それで、何を考えたのか集落の子供たちを殺して動物と一緒に箱に詰め、生贄として神に与えてしまったんだ」
生贄自体はよくある話だ。
私は生贄と縁はないけど、未だに生贄という行為が根付いているところはある。
だけど、これは惨い。
信仰から生まれた神は、その地に宿るなどして生まれた神とは違い、人間を重んじるものが多い。
そんな神に死体を生贄として送るのは、とても罰当たりな事だ。
「…まぁ、その神は案の定怒ってね。人間たちに利益を齎さなくなった。生贄にも反応せず、雨は止まず作物も育たぬまま。そうすると、人間たちはこう考えたのさ。自分たちの信仰する神はいないんじゃないかってね。そう疑ってしまったらもう終わりさ。信仰は途絶え、その神は消滅してしまった。そして土砂崩れが起きて集落まるごと土の下敷きになってしまったよ」
「それで…」
「肝心の生贄はそのまま。生贄として出されて以来、弔われもしないまま集落はなくなったんだ。無意味に殺された憎悪は強くてね。集落が無くなった後、箱の中からはい出てきては暴れだしたのさ。それで、私と巫女が全部払ったと思ったんだけど…」
「無月の家になぜか箱と一緒にいた」
「ああ、それが不可解だ。箱ごと、というのが引っかかる。あの場所から箱を持ち出すような奴はいなかったはずだ」
「でも事実、箱が無月の家にあった。お札と一緒に」
「うーん…悪いねぇ。こればっかりはわからない」
「私の方こそ、急に訪問してごめんね。お札と、箱の出所がわかっただけでもありがたいよ」
「そういってくれるとこっちも嬉しいねぇ」
これだけでも十分な情報だ。
だけど、箱を持ち出した人物の事はわかりそうにない。
匂いをたどるにしてもそもそも匂いなんて残ってない。
箱が運ばれたのは相当前だろうし、箱からは気持ちの悪い匂いしかしなかった。
「それと…今までつっこまなかったんだけど…膝で寝てるその子が…」
「無月だよ。結構な長距離移動で疲れてるから、しばらく寝かせているんだ」
私の膝の上には無月が頭を乗せて寝ている。
数時間も電車に乗ったりして休日に入ったばかりというのもあるのだろう。
無月はまだ中学生で、疲労も溜まりやすい。
膝の上に乗せている理由はこの神社に枕替わりになりそうなものがなかったからだ。
「あ、ああ…わかった。…そうだ、何かわかったことがあったら教えるよ」
「うん。助かるよ」
「なに、神様同士、協力し合うのは当然さ」
ひとまずは、解決したといってもいいと思う。
これ以上、何かできる事は現状ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます