第45話 試験が終わったら俺はどこで存在感をアピールすればいいんだ?
期末試験は無事に終了し、この日、全科目の答案が返ってきた。
「どうよ、これ?」
名雲家にやってきた結愛は、返却された答案をテーブルに広げる。
今回のテストでは、結愛は上出来ともいえる成果を上げた。
苦手な理数系の科目は平均点に達し、赤点とは無縁の位置まで成績を伸ばした。
比較的得意な文系の科目では、どれも平均点を超えを果たしていた。現国に至っては、90点を獲得する躍進っぷりだ。文系科目については俺はほぼノータッチだから、結愛が自分一人でもそれだけ勉強したということである。
結愛が満面の笑みを浮かべるのも当然だ。
問題は、俺の方である。
「……また、2位か」
首位の座を奪取するべく、気合を入れて望んだ期末試験も、結局2位止まりだった。
手応えはあった。全科目トータルのスコアだって、これまでの最高を更新したのだから。
ただ、またしても首位だってあいつが、そんな俺を上回っていたというだけのこと……。
「いいじゃん。私にとっては、慎治はぶっちぎりで1位だよ?」
「なんの慰めにもなってないんだよなぁ」
「慎治は私の勉強みてくれたんだもん。それなのにそれだけ点取れるんだから、十分がんばったでしょ」
今回俺は、一人で勉強したわけじゃない。
ここであんまり落ち込んだ姿を見せると、結愛が気にしてしまうかもしれない。
結愛は、今回頑張った。これを励みにしてくれれば、この先もっと成績が上がっていくことだろう。ウジウジしすぎて結愛のモチベーションを下げてしまってはいけない。
「そうだな、最高得点は更新できたし、今回はこの結果で満足するべきだな」
「でしょ? じゃあもうテスト終わったし、ぱーっと遊んじゃおうよ」
「待て。まだだ。まだ試験は終わってない」
浮かれる結愛に、俺は釘を刺す。
「間違ったところを完璧に潰すまでが期末試験だ。これから結愛には、もう一度期末試験と同じ問題をやってもらう。これに全問正解するまで、俺は教師役から降りないぞ」
「そんなぁ。打ち上げは?」
不満そうな結愛に、終わった後な、とだけ告げて、リビングにて緊急の勉強会が始まるのだった。
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