第22話 新たなる客 その1
金曜日の夕方、この日は結愛は不在で、家には俺と紡希しかいなかった。
夕食の準備を始める前に少しだけ今日の復習をしておくか、と自室に向かっていた時だ。
紡希の部屋から、話し声が聞こえた。電話でもしているのだろうか?
聞き耳を立てるつもりはなかったのだが、ちょうど紡希が声を大きくしたタイミングに出くわしたせいか耳に入ってしまったのだ。うちの扉は分厚くはないからな。
「――そう。だったら、二人はすぐに別れた方がいいわね」
紡希にしては、妙に芝居じみた声がする。
「わたしの経験上、その時点で膝枕すらしていないようじゃ、二人は長続きしそうにないから」
いや、これ紡希じゃないな。喋り方が違う。
名雲家の視聴環境は、今やテレビではなくサブスクの動画が主流だから、スマホで海外ドラマでも観ているのだろう。いったいどんな青春学園モノを観ているのか知らんが。紡希のことだから、リア充から死んでいくタイプのホラー映画の可能性もあるか。
立ち止まっている場合じゃない。紡希のプライバシーは、極力尊重したいからな。今、扉を開けられたら俺は確実に紡希からの信頼を失ってしまう。
俺は、足早に自室へと向かうのだった。
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