第9話 炎天下での密会 その1
そんなわけで俺は、頭上で太陽が燦々と輝いていようが関係なく、結愛のことばかり考えてぼんやりしていた。
サッカーの試合に積極的に参加することもなく、グラウンドをふらふらと漂う。
元々俺は戦力として期待されていないので、グラウンド内をお散歩していたところで咎められることはない。たまに近くにボールが来たら遠くへ蹴飛ばす程度の貢献はしていたしな。十分だろ。
体育教師はサッカー部の顧問ではなく、特にサッカーに詳しいわけでもなさそうで、さほど成績には影響しなさそうなことから、全体的にゆるい雰囲気があった。真剣になっているのは、仲間内でどっちが勝つか競っている陽キャ体育会系グループだけだ。
男子のるつぼと化しているグラウンドだったが、突如華やかで清浄な空気が流れ込んできた。
体育館でバレーボールをしていた女子が、換気のためか、それとも観戦のためか、両開きになっている大きな扉を開けたのだ。
体育館とグラウンドは繋がっていて、この大きな扉を開ければ男子が体育をしている光景を見ることができる。ヒマを持て余しているのか、観戦を始めた女子は数人いて、その中には結愛の姿があった。女子の集団に混ざると一際目立つな……。
「おーい、高良井が見てるぞ!」
男子の誰かが叫ぶと、グラウンド内の空気がピリついた。
それまで比較的和気あいあいとしていたのに、急に殺伐とし始める。
ボールを追いかける男子たちは、もはや仲間でもチームメートでも楽しく競う相手でもない。
活躍しまくって高良井結愛の関心を集める。
それだけのために走り、ぶつかり、ボールを蹴るだけのマシーンと化した。
メスを求める獣性が大爆発している地獄に身の危険を感じた俺は、ピッチから去ろうとするのだが。
運悪く、俺の方へボールが飛んできたらしい。
らしい、というのは、俺にはボールが見えなかったからだ。
ボールの存在に気づいたのは、後頭部に強い衝撃を感じた時だった。
延髄斬りを食らったような衝撃を受け、俺は前のめりに倒れ込んでしまうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます