姉からのメールと……

10月24日(水)


 昨日メールで、姉は「自分のしたいようにしたらいいよ。親にも言う必要ないよ」と言ってくれた。


 それから、姉の友人で子供を産んだ人の体験談も教えてくれた。


 姉夫婦は、共働きで去年立派な家を建てている。


 夫婦仲が良くて、海外に行ったり、好きなものを買ったりして二人の生活を楽しんでいる。

 私は姉夫婦の生活スタイルに憧れている。



「あんまりいいアドバイスはできないけど、愚痴なら聞くから」と言ってくれた。



 午後、東京に住んでいる大学時代からの友人Sから、久しぶりにメールが届いた。


「最近どう? 元気??」

 半年ぶりくらい。


 このタイミングで。かなり驚いた。



 一瞬、相談しようかと考えたけれど、止めた。


 もし中絶するのなら、知られたくない。

 そんなことで、Sは私を嫌ったりはしない。


 ただ単に、私の身勝手なプライド。


 つまり、私が中絶を躊躇っているのは、手術が怖い(それも大いにあるけれど)だけではなく、世間体を考えているのだ。


 新しい命についてのことなんて、これっぽっちも考えられない自分にゲンナリする。



 夜、夫が「中絶手術も出産も、どっちも怖いなら産む方にしたら楽しいんじゃない?」と言った。



 カッとなった。



「産まれて終わりじゃないんだよ? 大阪で、あなたは一日中仕事があって、結局子供育てるのは私なんだよ? 大阪に慣れるのだって一年以上かかったのに。イベコンの仕事見つけて、なんとか寂しさを紛らわしてたのに。子供とずっと家で二人きりでいるのは私だよ。妊娠したら体型だって変わるんだよ! 今までずっと頑張って維持してきたのに! 吐き気がしてるのも私だけ! お酒だって飲めない!! 何が楽しいの?」


 ヒステリックに泣きわめいた。

 夫は無言で背中をさすってくれていた。



 もう嫌だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る