第145話 魔導砲・改
化け物を結界に閉じ込めたレイは、イヴと宿泊先の宿に戻っていた。
「イヴ、リディーナを頼む」
レイは、
「そ、それは……」
「リディーナには内緒だ」
「?」
―『魔導砲・改』―
レイがリディーナに内緒でマルクに作らせた魔導砲の改良型。砲身は
レイは、弾倉に砲弾を装填しながら思考を巡らす。
「イヴ、さっき「悪魔」って言ってたな。視たのか?」
「は、はい。それ以外は視えませんでしたが……」
(悪魔とかファンタジーかよ…… いや、神もいたんだ、悪魔もいてもおかしくないか……)
「ここを出る準備だけしておいてくれ。刀を回収したらすぐに撤退する」
「わ、わかりました……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……。聖女様を……」
アンジェリカが苦しそうに起き上がり、レイに懇願する。
「諦めろ。聖女の安全と悪魔の討伐は、女神の依頼に入ってない。俺は仲間の安全を優先する」
「そ、そんな……」
「イヴ、その女を助けたいなら動かさないようにしておけ。背骨と肋骨にヒビが入ってる。
「……承知しました」
レイは、魔導砲に弾倉を装填すると、飛翔魔法を発動させて大聖堂まで戻って行った。
…
「あ、あの男は一体……」
「『女神の使徒』様です。アンジェリカ様」
「なんだ……と? それに、私を知っているのか?」
「元異端審問官のイヴと申します。今は、レイ様の従者をしております。オブライオン王国の聖女タリア様の最後のお言葉、『勇者を討つ者の降臨』を知る者です」
「元異端審問官だと? それにその青い髪……。貴様、『魔眼のイヴ』かっ! 任務に失敗し、姿を消した暗部の人間が何故まだ生きてる?」
「ダニエ様の計らいで、お恥ずかしながら……」
「ダニエ枢機卿が? ……それよりあの男だ。『女神の使徒』と貴様は言うが、証拠はあるのか?」
「私のことをご存じでしたら『魔眼』のこともご存じかと……。それに、少なくともレイ様は神託の通りに行動しておいでです。あの
「『鑑定の魔眼』か……。だが、それならば何故あの男は聖女様を見捨てる?」
「それをアンジェリカ様が仰るのですか? 女神様の神託では此度の『勇者』は悪しき者です。あの
「バ、バカな…… それはあの騎士が……」
「偽者と看破できなかった教会本部の責任は免れないかと……」
「きょ、教皇様の責任だというのかっ! 貴様っ! 異端審問官の分際で……」
「聖女様でさえ操られていたのです。教皇様が操られていないという保証はありません」
「なっ……」
「今は、レイ様を信じて待つ以外ありません。私は信じております」
「……」
イヴとアンジェリカは、窓の向こうに小さく映るレイに視線を向ける。
…
(結界は一応の効果はあったようだな。核融合反応を封じ込める結界だ。あれが簡単に破られるようなら、すぐに引き返して逃げる所だ。だが、悪魔と言っても物理的法則は受けるみたいだな。直接攻撃では、すぐに再生されて、今一ダメージらしいものが与えられなかったが、リディーナの電撃では効果がありそうだった)
「
レイは、悪魔のいる礼拝堂上空にいた。『
(まあ、放てたとしても街中じゃ、あんな魔法は撃てないからな……)
魔導砲・改のコッキングレバーを引き、砲弾を薬室に装填する。砲弾は
「悪魔ってんなら聖属性が有効か? どっちにしろ一発金貨五百枚だ。おいそれと試射も出来なかった。ぶっつけだが、実戦テストの相手としては申し分無い」
結界内では、神殿騎士を殺し尽くした悪魔が、結界を壊そうと結界を殴り、魔法を放っていた。
結界が消失すると同時に悪魔とレイの目が合う。
「食らえ」
魔導砲・改から聖属性を帯びた砲弾が発射される。
悪魔は、ニヤリとした顔で片手を振り上げ、その攻撃を受け止める……が、
眩い光を伴い放たれた砲弾は、悪魔の掲げた右手を腕ごと消失させた。
唖然とする悪魔。
レイは、ダメージを与えたと確信した瞬間、引き金を連続で引く。
続けて二発の光の砲弾を受け、悪魔の半身が消失した。砲弾の衝撃が余波となって建物を吹き飛ばす。
『バ、バカな……。例え聖属性だとしても、この俺が人間ごときの魔法で…… 再生が阻害される? ……ま、まさかっ!』
空になった弾倉を排出し、レイは魔法の鞄から予備の
「拍子抜けするほど呆気なかったな……。いや、
レイは装填した『炎古龍』の魔石砲弾に聖属性を付与し、引き金を引く。
『貴様っ! まさか天使が人間に擬態してただとっ? ありえ…… 』
悪魔は言葉を最後まで紡ぐことなく、真紅の光に包まれた。
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