第17話 神域
――『神域』――
「驚いたわね……」
神域にて、女神アリアは呟く。女神の目の前の空間には、レイが勇者四人を殺した映像が映し出されていた。
「偶然の遭遇とは言え、四人の転移者を瞬殺ですか……」
アリアの前に跪いた青年が、神妙な面持ちで女神に言う。
金髪碧眼の青年。容姿は驚くほど整っており、背には二対の白鳥の様な翼が生えていた。
『天使』だ。
「宜しかったのでしょうか? あのような者に任せて。些か危険では?」
「ザリオン、アリア様の御判断に間違いがあるとでも?」
女神の前で同じように跪く少女が、ザリオンと呼んだ青年の天使を睨む。この少女も同じ様に翼が生えており、金髪碧眼。容姿も美しく整っている。
「いやいや、滅相もないよエピオン。只、いくら身体があれしかなかったとは言え、力を与え過ぎてはないかと思ってね」
「二人共、レイの身体は天使級の性能があっても、地上に降す際に幾重にも封印を施してあります。ザリオンが心配するようなことは無いわ。まあ、それでも強力な身体であるには違いがないのだけれど。只、異界を渡った際に起こり得る、異能が発現してなさそうなのが気にはなるかしら? 何せ、肉体を与えて降すなんて初めてだから、今後も要観察ね。……でも、順調のようで一安心だわ」
(裸に手ぶらで降しちゃった時には、しまったと思ったけれど、大丈夫だったみたいね……)
「それよりザリオン、調査はどうなっていますか?」
「はっ、召喚を実行した宮廷魔術師たちは全員死亡。詳細を知る者は存在しませんでした。ただ……」
「ただ?」
「死亡した者達の魂が、輪廻に還っておりません」
「ッ! どう言うことなの?」
「わかりません。地上で
(まさか……)
「引き続き調査しなさい」
「はっ!」
「エピオン。貴方は地上の聖女に神託を伝えなさい。レイの詳細と協力するようにと。それとオブライオン王国には今後近づかないように。特に召喚された勇者達との接触は控えるよう合わせて伝えなさい」
「宜しいのですか?」
「地上には、あの時の勇者達のお伽話があるのよ。私の使徒と勇者、天秤にかける者も出るでしょう。なるべく接触は避けたいわ。レイの邪魔になるもの」
「アリア様の使徒と、あのような愚か者共を秤にかけるなどっ!」
「人間とはそういうものよ」
「……畏まりました。早急に伝えます」
「私は暫く休むから、あとはお願いね。流石に力を使い過ぎて疲れたわ」
「「お戯れを……」」
手をヒラヒラさせながら、そう言ってアリアは消えていく。
残った二人の天使は頭を下げながらそれを見送り、やがて二人も静かに消えていった。
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