第60話 戦争相談ですか?
王国はまさかの切り札の一つである大型破壊兵器『ヴァレンシア』の陥落で大打撃を受けた。
更に元将軍ダレンさんの領との前線で大敗を喫して、前線が押し潰れた。
幸い将軍ダレンを打ち取ったのがせめてもの救いだろう。
しかし、実はこの将軍ダレンさん。
物凄いダメダメ人間だったみたいで、長男であるディレンさんも毛嫌いしていた。
兎に角、我が儘な人で、自分の思い通りにいかないと当たり散らかしたり、酒癖も悪く、領民達の税も酷いモノだった。
そこに長男のディレンさんが大人になり、内政を何とか父親から受け継ぎ、内政を立て直して領民達からは『神の子』と呼ばれているとのこと。
今回、父親が亡くなった事で、事実上領主となり、将軍職にも継ぐ事になるのだが、肝心のディレンさんは内政に特化した人物だという事を自分自身が最も理解していて、将軍職を辞任し、隣領のヘルドさんに協力を仰いでヘルドさんが前線を管理する事となった。
これも父親が健在していた頃からこうするつもりで話を進めていたというのだから、ディレンさんの有能さが良く分かる。
閑話休題。
押しあがった前線の所為で、これからは大規模の戦争になる事が予想されるという。
連邦国と王国の前線は大きく二つあり、別方向ではアースさんが傭兵として働いていた。
アースさんからの情報で、珍しい事に、王国軍が今の前線を放棄して後退した事だった。
どうやらヘルドさんの逆襲を恐れての事らしく、今の軍を一箇所に集める為らしい。
ヘルドさんからも同じ情報があり、ほぼ間違いないだろう。
現在王国軍は『要塞都市ゲビルグ』に集まっているそうだ。
「そこで、またしてもお前の出番だ」
「えー!」
「そこは喜べよ。俺様の為になるんだぞ?」
「そりゃ……ヘルドさんの為になるなら頑張りますけど、僕の能力の使い方、間違えてませんか!? 僕としては収集する方が正しい使い方だと思うんですけど……」
「それはそれ、これはこれ。お前の能力なら、要塞を気づ付けず、誰も傷つかずに占領出来るんだからな」
その言葉にライブラさん達も頷いた。
ちょっとだけ複雑な表情で。
そりゃ……あんな
「王国の切り札は全部で三つある。一つ目は大型破壊兵器『ヴァレンシア』だ。これは今回の戦いで大破してしまったし、破片も全てこちらで回収しているからもう修復も不可能だろう。これで残るは二つ」
ヘルドさんの言葉に息を呑んだ。
「二つ目は勇者クラフトだ」
勇者クラフト。
正真正銘の能力『勇者』を授かった王国の最強。
僕が王国にいた頃でもその名を聞かなかった日がないくらい、全ての王国民がその名を称えた。
「これは運が良い事に、現在勇者は王国にいない」
「いない!?」
「ああ、とある事情で王国を離れている」
「???」
「――――魔族との戦いに出掛けているのだ」
魔族か……。
そう言えばダークエルフの里でも魔族がどうたらって聞いた事あったっけ。
「本来なら破れるはずのない『ヴァレンシア』が破れたのだ。今の王国軍はパニック状態に陥っている。しかし、それでも優秀な奴はいる。そいつの冷静な判断の所為で、王国軍は冷静に撤退し、『要塞都市ゲビルグ』に引き籠った。
勇者程の強さではないが、それでも剣聖となった奴もいるくらいにはあの王国も人材には困っていない。それで最後の切り札が今回の戦いで動いた。そいつが今『要塞都市ゲビルグ』をまとめあげている。我々は今回の戦いでそいつを討ちたい」
ヘルドさんの珍しい詳しい説明と迫力が、今回の戦いをどれ程重要視しているかを物語っていた。
そして、ヘルドさんの次の言葉に、僕は果てしない不安と怒りを覚える事となる。
「そいつは、賢者の末裔。ヴァイク・ハイリンス魔導士だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます