第10話 薬ですか?

「スキル! 『錬金調合』!」


 シーマくんの言葉と共に、目の前にある素材、二つから光が溢れ出した。


 光はどんどん強くなっていき、暫くして光が止み、小さな錠剤が置いてあった。


「良し! 出来た! これならマイケル爺さんも助かるはずだよ!」


「本当か! シーマくん、凄いよ!!」


「いや、凄いのは君だよ。アレクくん」


「いんや! お前たち二人共すげぇよ! 一先ず、早くを届けようぜ!」


「おー!」


 そして僕達は錠剤を持って、マイケル爺さんに向かった。




 ◇




「じいじぃ……頑張って!」


「うぅ……アイリスゃ……」


「じいじぃ! 喋らないで! もうすぐアレク達が薬持って来てくれるから!」


「アイリスゃ……これから……話す事……よく……聞くんだぞ……」


「じいじぃ! 無理だ――――」


「――――――――――」


「!?」




 ◇




「アイリス!!! 薬持ってきたよ!!」


 僕は急いで、家の中に入っていた。


「アレク!!」


「ほら! この薬を急いで!」


「う、うん! 分かった!」


 キョトンとしていたアイリスが、薬を貰い、マイケル爺さんに飲ませた。


 マイケル爺さんの身体から淡い光が出て、マイケル爺さんの顔色が良くなった。


「じいじぃの顔色が良くなった!」


「おお! シーマくんが作ってくれた薬のおかげだよ! シーマくん本当にありがとう!」


「いや、素材を集めてくれたアレクのおかげだよ」


 僕は喜ぶアイリスちゃんに抱きしめられた。


二人・・とも本当にありがとう!!」


 僕達は何とかマイケル爺さんを回復させる事が出来た。



 ――しかし僕は、このことで想像だにしなかった事が起きるなど、思ってもいなかった。




 ◇




 数日後。


 マイケル爺さんが目を覚ました。


 目を覚ましたマイケル爺さんはすぐに歩けるくらい元気で、シーマくんの事を話すと、すぐに納得してくれた。


 そしてマイケル爺さんとシーマくんから、僕とピエルくん、アイリスちゃんに話しがあると集められた。



「今回、シーマくんの力を見てしまったからには、三人には伝えておかなければならない事があるのじゃ」


 シーマくんも頷いていた。


「シーマくんの能力はのう、『錬金術師』という能力じゃ」


 『錬金術師』!? そういえば、スキルを唱える時、そんな事言っていたね。


「『錬金術師』はのう、この世界でも最も希少な能力の一つ、Sランク能力じゃよ」


「「「えええええ!?」」」


 錬金術師は知らないけど、Sランク能力の言葉は知っている。


 全ての人が十歳の時に授かる能力には、その強さでランク付けがされている。


 例えば、僕の家が欲しがっていた『賢者』はSランク能力だ。


 それぞれの能力は希少性によって、Sランク能力、Aランク能力、Bランク能力、Cランク能力に分類される。


 そして、最後に一つ、Zランク能力という言葉が存在する。


 これは、全ての能力の中で、最も・・低い能力だ。


 因みに、僕の能力『ゴミ箱』は既にZランク能力と判断された。


 このランクは最初から決められている訳ではなく、人々が勝手に決めているランクなので、実際の強さを表している訳ではない。



「しかも、『錬金術師』はSランク能力の中でも希少な部類の能力なのじゃ」


 凄い! Sランクの能力だけでも凄いのに、更にその中でも希少なのはとても凄い事だ。


「だからのう、この事が世間にバレてしまうとじゃ……シーマくんが大変な目に合ってしまうのじゃ」


 え!? 寧ろ、良い待遇を貰うと思っていたのに、逆に大変になるの?


「『錬金術師』はのう、ステータスが低いから力が弱いのじゃ、ただその代わりにスキルが素晴らしいのじゃ、だからもしバレてしまえば……監禁されて、一生言いなりになり兼ねないのじゃ」


 そっか……ステータスが低いから戦う事が出来ない、という事は……僕が生まれて過ごした、あの家のような状態になってしまうのか。


 自由もない、ただ言われた事だけどして、出されたご飯を食べる。


 生きてる感じがしなかった、あの生活を。


「だから、絶対に、この事は漏らすでないぞ?」


 僕達は絶対に口外しないと決心した。

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