いざ、秘密の実験場へ!!

X-58話 解錠せよ!

 秘密の実験場。そう、ここは何人の目に触れることなく、秘匿されておかなければいけない場所なのだ。だから、この場所にふらりと舞い込んだ者。言うなれば、侵入者は排除しなければならない。それが、秘密を守っていくために必要な最小の犠牲なのだから。


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 しばらく歩くと、俺の目の前に再び先ほどは破壊されていた扉と、同じ作りをした扉が道を塞いでいた。次は、破壊されているということはなく、しっかりとその機能を果たしている、試しに、数度ドアノブをいじってみたがやはり、空回りの音が聞こえるだけで、一向に開く気配を見せることはない。


「仕方ない・・・。壊すか!」


 一人で呟き、右手を使って力拳を即座に作る。そして、はぁー!という気迫と共に、溜めていた力を一気に放出するイメージで力強く拳を突き出した。


カァァン・・・!!


 周囲に響く金属音。反響したそれは、間近にいた俺の鼓膜をも激しく震わせ、頭痛を生じさせる。と、同時に右手に鋭い痛みが走った。言うなれば、まるで絶対に壊せないものに拳を振り下ろしたような、そんな痛み。その時、俺の頭を嫌な予感がよぎった。この感じ、どこかで身に覚えがあるような気が・・・。


「ッ——! あちゃ〜、やっぱりか!!」


 右手をフラフラさせながら、俺は先ほど殴りつけた物体を見据える。そこには、本来なら吹き飛ばされた扉と、その先につながる道が現れているはずだ。だが、実際はどうだろうか。簡単だ。変わらず扉が健在で行く末を遮っている。俺の、天恵は再び


 この問題といつまで付き合えばいいのだろうか。すぐに天恵をフルに自由に使いこなすことは叶わずとしても、せめて出したい時には力を振るえるようにはなっていたい。そうでないと、命の危機に瀕した時、天恵が使えませんでした。で死んでしまうのは、情けなくて涙が出てくる。


「はぁ〜。辺りに脇道は・・・。なさそうだな。こっからどう進んだらいいんだよ」


 ため息まじりに、つい愚痴がこぼれてしまう。だが、打つ手が残されていないのも事実であった。もう一度、天恵を使うのを試してみるか。いや、結果は見えている。この分からず屋な天恵の付き合い方はなんとなくではあるが、日に日に熟知してきている、という自負がある。こういった、能力が使えない日は悉く使えないのだ。今日という1日は、天恵を頭に置くのは間違った判断にしかなりえない。


「万事休す——か。引き返すか」


 そう言って踵を返した時。奇妙な音が背中から聞こえた。それは、解錠の音。厳重にロックされた鍵が一つ、また一つと解除されていく音であった。

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